東京、群馬、山梨の大雪孤立地帯に入った新潮が示す冬停電の深刻さ

◆教訓となる雪害現場

 “歴史的大雪”に見舞われた日本列島。特に普段大雪の降らない関東甲地方では孤立地区や停電、物流の停滞で、いまだに正常な生活が取り戻せていない所がある。

 14日(金曜日)から降り始めたこの冬2度目の大雪は、水分を含む湿った重たい雪だった。ビニールハウスを押しつぶし、カーポートの屋根はひしゃげて車をへこませただけでなく、翌日からの除雪を難しくさせ、道路は大渋滞。週明けには、スーパーの棚から食料品が減っていった。

 週刊新潮(2月27日号)が「首都圏『ホワイトアウト』7000人の現場報告」という特集記事を載せている。大雪で孤立や停電などに見舞われた群馬県南牧(なんもく)村、東京都檜原(ひのはら)村、群馬県嬬恋(つまごい)村万座温泉、山梨県富士河口湖町などに取材をいれ、現状を聞き出している。

 そこで共通して明らかになったのは「停電」による被害である。災害で最も困るのが「断水」であり、次に「停電」であることは、3年前の東日本大震災でも明らかになったが、今回の大雪で改めて冬季の「停電」の恐ろしさを再確認させられた。

 停電は多くのところで土曜日午前中から始まった。南牧村では特別養護老人ホームの施設長の話を聞いているが、近所から石油ストーブを何台か借り、またペットボトルにお湯を入れた「湯たんぽ」を渡して、55人の高齢入所者に凌(しの)いでもらったという。

 危険なのは「人工透析患者」だ。「役場が県に要請し、ヘリコプターで自宅から村の外の病院に搬送」して対応したという。

 雪の中を移動して「凍死しそうになった」のは山梨県甲斐市に向かった東京在住の男性だ。「高齢の両親が心配になって」東京から甲府に向かった。駅まで両親が車で迎えに来ていたが、実家に向かう途中、雪で道がふさがれ、たどり着くことができない。車を乗り捨て、徒歩で老齢の両親を連れて雪道を歩き、あやうく「遭難しそう」になったという。雪の時にむやみに外に出るべきではないという教訓だ。

 万座温泉では宿泊客が閉じ込められた。道路が不通となり、チェックアウトができず、到着予定者もキャンセルとなった。幸い食料はあり、週明けには道が開通したので、事なきを得たが、旅館が被った「損害は少なくない」という。

 河口湖の民宿では停電で暖房が切れて、寒さで目が覚めた。夜はろうそくの明かりを灯し、身を寄せ合って寒さを凌いだ。

 いずれも、大雪で道が寸断されて孤立し、さらに停電で暖房がとれず、中には料理もできなくなったところもあった、ということだ。

◆電気無しでどう対応

 同誌の記事は「現場報告」だから、これでいいのだろう。締め切り間際だったこともある。だが、もし次週でも「大雪」関連の記事を取り上げるなら、今度はぜひ「行政がどう対応したか」に焦点を当ててほしいとお願いしておこう。

 多くの自治体では、ホームページや緊急メールを通じて、大雪情報、被害状況、復旧予定などを住民に向けて発信していた。群馬県前橋市の山本龍市長は自身のツイッターできめ細かな情報発信をしていた。

 しかし、これらは「停電」していなかったから可能だったことだ。ホームページやメールを扱えない人や、停電で機材が使用不能になったところには届かないものなのだ。自治体は停電し道路が寸断された状況で、どうやって孤立住民を把握し、連絡を取り、必要な対策を打てるかを考えなくてはならない。各自治体の取り組みの特集は今後の教訓にもなる。

◆不覚取った舛添知事

 また、同誌はグラビアで、自衛隊の災害出動と舛添要一東京都知事を取り上げている。都知事からの災害派遣要請を受けて、自衛隊員が青梅街道の奥多摩湖付近のトンネルの除雪を行っている写真だが、16日になってようやく要請した舛添知事の“不明”を批判している。

 舛添氏は、知事選で「災害に打ち勝つ都市防災」を訴えながら、「(大雪は)雪国から見たら笑っちゃうことで大したことではないですよ。1日で終わっちゃう話ですから」と「鼻で笑った」のだ。

 山梨県、群馬県の知事が15日には出動要請を出したのに対して、孤立地区を抱えながら、舛添知事が要請したのは16日になってからだった。舛添氏にとって「東京」とは都市部だけを指しているのかもしれない。

(岩崎 哲)