欧米とは桁違いに感染抑止の日本、理にかなわぬ朝日の五輪中止論

◆自分には優しい朝日

 またぞろ朝日である。「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」との社説を掲げた(5月26日付)。コロナ禍の感染拡大が止まらないから、開催は「理にかなうとはとても思えない」とし、「冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める」と主張している。

 朝日は東京五輪に賛同する「オフィシャルパートナー」だ。何十億円かの契約金を払って販売促進に利用し取材でも便宜を得てきた。開催反対ならパートナーから降りるのかと思いきや、紙面にそんな話はない。ホームページに「東京2020オフィシャルパートナーとして」との一文があり、それには契約当時から「オフィシャルパートナーとしての活動と言論機関としての報道は一線を画して」いたのでパートナーは続けるとしている。社論と会社は別物。言うことと、やることが違ってもOKなのだ。

 それで合点がいった。朝日は昨年4月、「ジェンダー平等宣言」を行い、紙面のみならず会社組織も女性比率を向上させると豪語した。その1年間の“成果”を5月4日付に載せたが、社の管理職は12・0%から13・3%、全社員は19・8%から19・9%とほとんど変わらず、論説委員は13・9%から10・3%、男性育児取得率は17・2%から12・3%、新入社員は38・7%から30・2%に減っていた。

 管理職や論説委員の女性比率は国会議員のジェンダーギャップ指数が世界166位の日本(衆院議員9・9%)と同程度だ。紙面では女性議員を増やせと叫ぶが、社としてはそんなものだ。人には厳しく自分には優しい。だから朝日は嫌われる。赤字額が1879年の創業以来、最大の441億円に上ったそうだが、宜なるかな。

◆影響小さいとの試算

 さて五輪だが、朝日5月25日付社会面に東大教授の「五輪開催と感染拡大」の試算が載っていた。それには「選手ら入国者による影響より、経済活動が活発になって都内の人出が増えることによる影響の方がはるかに大きい」とある。試算は10万5千人が入国すると仮定し、半数がワクチン接種を終えており、100人は検疫をすり抜けて感染したまま入国するといった前提で計算。それでもコロナ拡大の影響は小さいそうだ。

 国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長は全関係者にワクチン接種を呼び掛けている。インドは「日本に向けて出発する前に、選手団の全員が2度のワクチン接種を完了させる」という(朝日5月28日付夕刊)。日本もワクチン接種を進めれば「安全・安心」は確かになる。朝日の五輪中止論の方が「理にかなうとはとても思えない」。

 藻谷浩介・日本総合研究所主席研究員は毎日30日付「時代の風」で、米国の国務省が日本への渡航中止勧告を行ったが、「ついに米国も東京五輪を見限った」と捉えるのは早とちり。これは「最近4週間の新規陽性判明者が、人口100万人あたりで1000人を超えたら発動する」という機械的な基準に沿ったものだとし(日本は5月26日までの4週間で1180人)、こう指摘している。

 「『どの面下げて』という感想は否めない。米国の最新の4週間の数字は、ワクチン接種の進度にもかかわらず日本の2・5倍の2894人だからだ。EU平均は3310人と、日本の2・8倍である。昨年からの累計では、米国で人口の10・0%、EUで7・2%が感染したが、日本は0・6%。欧米とは桁違いに感染を抑止できている」

◆日本に期待する世界

 その上で藻谷氏は言う、「世界の競技団体は期待している。欧米に比べて感染抑止に明らかに成功している日本が、『コロナに対する人類の反攻の狼煙として』、五輪を実施することを。『秩序正しく行動し、約束を守る日本人』というブランドを、世界の多くは信じているのだ」。

 それでも朝日は五輪中止。なるほど「反日」新聞である。

(増 記代司)