コロナ禍の厳しい経済運営の中で独善的な政府批判に終始した毎日

◆ワクチン接種がかぎ

 年間を通じてコロナ禍に見舞われた2020年度の日本経済は、実質国内総生産(GDP)が前年度に比べ4・6%減のマイナス成長で、戦後最悪の落ち込みとなった。

 21年1~3月期は年率換算で前期比5・1%減。4~6月期もコロナ禍が依然続いており、2期連続のマイナス成長が懸念される状況である。

 こうした厳しい日本経済の状況に、新聞は全紙が社説で論評を掲載。見出しを挙げると次の通りである。19日付で読売「好調な企業は成長への投資を」、朝日「感染収束で本格回復を」、産経「格差広げぬ経済下支えを」、日経「迅速なワクチン接種が経済回復の前提だ」、20日付で毎日「悪循環脱却へ政策転換を」、東京「雇用への波及阻みたい」、本紙「積極的にワクチン接種進めよ」――。

 列挙したように、「感染収束」や「ワクチン接種」が一つのキーワードと言え、朝日や日経の主張は、まさに見出しの通りである。

 ワクチン接種が進む米欧では、経済が回復または成長率見通しを引き上げるなど、経済正常化への動きが加速している。日経は、「先進国で際立つ日本のワクチン接種の遅れは、経済の正常化をさらに後ずれさせかねない」として、「景気の一段の下押しを避けるためにも、迅速な接種を進めたい」と強調したが、その通りで、本紙の主張もほぼ同様である。

 読売も、見出しこそ違ったが、趣旨は日経などと同じ。「世界では、接種の進捗(しんちょく)度が経済の再生に直結している」として、政府に対し「ワクチン接種が遅れている原因を突き止め、有効な具体策を講じるべきだ」と強調。国民にワクチンを早期に行き渡らせることが最大の経済対策となる、とした。

 コロナ禍で難しいのは、感染対策と経済対策の両立である。読売は「新型コロナウイルスの感染抑止策を徹底すれば、経済が打撃を受けるのは避け難いが、その影響は最小限にとどめねばならない」と指摘し、本紙は「感染状況との絡みで景気刺激策の実施が難しい」とコロナ禍の厄介さを挙げた。

◆公正に評価した朝日

 未曽有の経験だけに、政府の対策が試行錯誤になるのもやむを得ないが、そうした事情を無視して、政府批判に終始したのが毎日である。

 「経済を無理に回復させようとして感染防止が後手に回り、結局は景気を冷え込ませる悪循環に陥っているのが実態」「政府は昨年末、経済対策として過去最大の当初予算に加え、大型補正予算も編成した。だがマイナス成長になってしまい、何のために巨費を投じたのか分からない」などと辛辣な政府批判の言葉が並ぶ。

 しかし、こうした予算を組まなかったら、経済はもっと悪くなったであろうし、同紙がやり玉に挙げた需要喚起策「GoToトラベル」事業も、現場の切実な声を聞き入れて実施されたものであり、効果もそれなりにあげたわけである。同紙の批判は、コロナ禍の難しさを全く考慮しないばかりか、一面的かつ独善的にすぎよう。

 その点、同じ左派紙でも朝日は、「供給が滞って物不足になったり、金融システム不安が起きたりといった『底割れ』的な事態は防げている。財政・金融政策の総動員で倒産は抑えられ、失業率の上昇もリーマン・ショック時より小幅だった」と評価すべき点は評価し、まともである。

◆産経は「格差」を重視

 産経は日経、読売などと同様、「経済の本格回復のためにもワクチン接種を急ぐべきは当然」としながらも、見出しの通り、適切な財政措置での経済の下支えに重きを置いた。二極化が業種間ばかりでなく、正社員と非正規社員などあらゆる面で鮮明で、「放置して格差が固定化すれば、コロナ収束後の経済活力も阻害する」と懸念を示す。格差に言及したのは朝日、毎日、東京もそうだが、見出しにまで掲げたのは産経だけで、意外だった。

(床井明男)