架空予約でワクチン接種を妨害する護憲リベラル紙はコロナ戦争の戦犯

◆「善意頼み」を逆手に

 公益性なんかあるものか。新型コロナウイルスワクチンの「自衛隊大規模接種センター」の予約システムに架空予約をして「欠陥」をあげつらった朝日と毎日のことだ。筆者の勤める病院でも高齢者のワクチン接種が始まっているが、予約に苦労している家族は「こんな人たちがいるから、なかなか予約が取れないのかなあ」と溜(た)め息をついていた。

 朝日の場合、朝日新聞出版のニュースサイト「アエラドット」が予約の始まった17日、架空の接種券番号や市区町村コードを入力しても予約できたと「欠陥」を指摘する報道を行った。毎日は18日付に「大規模接種予約、架空番号で可 防衛省『善意頼み』」との見出しで、記者が「防衛省のサイトから、架空の市区町村コードや接種券番号を入力したところ、予約作業が進めることができた」とし、65歳未満でも生年月日を入力すれば予約できると、まるで架空予約を“指南”するかのように書いている。「架空番号で可」は奨励と見誤る。不謹慎極まりない。

 いずれも「予約はキャンセルした」(朝日)、「既に取り消している」(毎日)というが、少なくともその間、同枠に高齢者は予約できなかったことになる。「公益性の高さから報道する必要があると判断した」と朝毎は正当化するが、産経20日付主張が言うように「『報道の自由』に値しない」。

 だいたい大規模接種は当初から「国主導の枠組みは急ごしらえのため、トラブルも予想される」と見込まれていた。それでも行うのは、医療従事者の確保に苦しむ市町村の取り組みを補完する狙いがあり、「迅速なワクチン接種を実現する上で、大きなカギを握っている」からだ(読売15日付・尾山宏編集委員「『最後の砦』自衛隊に期待」)。それだけに架空予約は防衛省の「善意頼み」を逆手に取った悪意報道と言うほかない。

◆「戦時体制」取る欧米

 英統計専門サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、わが国の接種率は経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国中でも最低水準で、世界平均の9・2%を大きく下回り3・9%にとどまる(産経5月21日付)。接種率のトップはイスラエルで62・8%、次いで英国が54・2%。両国とも「戦時」でワクチン接種を進めている。

 イスラエルの場合、新型コロナ禍が中国から世界に拡散した昨年3月、対外諜報(ちょうほう)機関「モサド」が首相の命を受け、軍や保健省と共に合同作戦室を設置、対コロナの前面に立った(これは毎日の大治朋子・専門記者による=昨年6月2日付「火論」)。ワクチン接種も同様だ。

 産経の三井美奈パリ支局長によると、欧州連合(EU)はワクチンを世界90カ国に供給しているが、生産が追い付かなくなったためフランスでは戦時中の工場接収のように4社に瓶詰めや材料加工を担わせ、年内に2億5千万回分の製造を可能にした。輸出先のトップは日本で全体の4割を占めるというから、わが国のワクチン接種は欧州の「戦時体制」に依存しているわけだ。米国はワクチンを確保するため朝鮮戦争時の1950年に制定された軍需物資増産のための「国防生産法」を発動している(11日付「パリの窓」)。

 また生物兵器にも対応する米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)はいち早く「メッセンジャーRNA(mRNA)」ワクチンに目を付けモデルナ社などに研究開発資金を援助。それで1年もせずワクチンを開発・製造する成果を生み出したという(本紙22日付「記者の視点」武田滋樹政治部長)。

◆「平時」で苦戦の日本

 このように「戦時」で対応した国がコロナ対策に成功している。これに対して日本は「平時」で苦戦している。その元凶は「戦時」を排斥する現行憲法にほかならない。自衛隊違憲論に与(くみ)し架空予約も辞さない護憲リベラル紙は「悪質な妨害愉快犯」(安倍晋三氏)だけでなく、コロナ戦争の戦犯と言えそうだ。

(増 記代司)