革命政党の体質変わらぬ共産党を「野党共闘」に加えようとする朝日

◆何も警戒感を抱かず

 日本共産党の理論政治誌『前衛』が5月号で通算1000号に達した、と毎日が伝えている(4日付)。終戦直後の1946年に創刊され、近年は野党共闘路線を反映して他党幹部のインタビューを掲載するなど柔軟な姿勢もうかがえるとし、「名前は『前衛』だが、国民的な雑誌に発展できる」との志位和夫委員長のコメントを載せている。

 相も変わらず昔の名前で出ています、の図だ。共産党の党名も前衛も変えない。それは一貫して共産主義に従っている証しだ。「共産」はマルクスに由来し、「前衛」はロシア革命の立役者レーニンの組織論に基づく。つまりマルクス・レーニン主義の政党だ。

 レーニンによれば、革命を成就するために絶対容認できない三つの思想がある(『何をなすべきか』1902年)。それは法の支配を主張する「自由主義」、労働者が豊かになることを望む「経済主義」、議会政治を最上のものとする「民主主義」で、いずれも革命への意欲を殺(そ)ぎブルジョアジー(資本家階級)の味方となり、プロレタリアート(労働者階級)の行く手を阻む。そこで労働者階級の革命意識を常に高揚させ指導する革命エリート集団「前衛党」が必要だ。それが共産党で、『前衛』は「日本における革命的闘争の指導的な灯台」とされた。

 こういう政党だから警察庁は「暴力革命の方針」を堅持しているとし、公安調査庁は破壊活動防止法の調査対象団体に指定している。ところが、メディアは甘い。何の警戒感も抱かず、おめでたく「共産党理論政治誌、1000号に」(前掲、毎日)と紹介する。

◆閣外協力でも影響大

 朝日に至っては4月の国政補選で野党側が全勝すると、「近づく衆院選に向け、選挙区での候補者の一本化と同時に、共通の公約づくりや政権の枠組みに対する考え方のすり合わせを急がねばならない」(4月26日付社説)と、共産党を加えた野党共闘を急(せ)き立てている。

 リベラル学者の山口二郎・法政大学教授は、共産党は閣外協力の位置付けとし、国会の重要な委員長ポストを同党に与え、「法案審議と調査機能の充実を図ることで、共産党の活躍の場を広げる」という野党共闘の落としどころを指南している(「週刊金曜日」4月30日)。これを作家の佐藤優氏は産経9日付で取り上げ「共産党は共産主義社会の建設を目標とする革命政党だ。共産党が閣外協力であっても政権に加わると日本の国の形が変化する」と警告する。

 危惧はかねてからある。1970年代に共産党は「民主連合政権構想」を発表し野党政権への意欲を示したことがある。これに対して学者党員の田口富久二・名古屋大学教授が異議を唱えた。共産党の一枚岩主義では「支配政党の組織的質が国家体制の政治的質を規定」するのは避けられず、党と国家の癒着によって一党独裁の危険が生じるとし、党改革を訴えた(『先進国革命と多元的社会主義』)。

◆学問の自由ない党員

 だが、党中央は解党主義だと激怒し榊利夫・党理論委員長は「『学問研究の自由』の名で党規律を否定することができないことはいうまでもない。学者であっても、党規律の前では特権は許されないのであり、『研究発表』や『学術論文』であっても党員としての責任をとらねばならない」(党機関紙『赤旗』78年9月10~11日付)と田口氏を指弾した。

 それでも足りず不破哲三書記局長(当時)は「前衛」(79年1月号)に14万4千語、実に100ページにわたる田口批判を展開した。田口氏は党執行部の民主的選挙を唱えたが、志位委員長が20年以上もトップの座に君臨するように党体質は全く変わっていない。

 学者党員に学問の自由はないのだ。これが日本学術会議問題の本質だ。ひとたび政権に加われば、学者党員のみならず官僚党員らが「忖度(そんたく)」どころか党指令で動き、“赤い政府”が出現する。それでも朝日は「野党共闘」に共産党を加える? こっちは記者党員が闊歩(かっぽ)しているか。

(増 記代司)