菅首相がなぜ五輪開催に拘るのか理由を探るが答えは出さない文春
◆中止なら損賠請求?
「どうしてもやる」という菅義偉首相。東京五輪・パラリンピックのことだ。菅首相がそれほどまでに拘(こだわ)る理由を知りたい。その庶民の疑問にスキっとした答えを出すのが週刊誌の役目だ、というと大げさだが、期待はする。
週刊文春(5月20日号)がそれを試みている。海外メディアや五輪組織委員会の中からも「中止」を求める声が出ている状況で、医療体制などさまざまな理由から、開催が難しいことを説明した後、同誌は国際オリンピック委員会(IOC)が受け取る莫大(ばくだい)な放映権料の話を持ち出した。
「政治部デスク」が、「五輪中止の場合、IOCは、米放送局のNBCから約一千三百億円に上る放映権料を受けとれなくなります。すると、組織委や都がIOCから損害賠償請求をされる可能性がある。そのため、中止は不可能と言われてきました」と説明した。
これだと損害賠償を恐れて、新型コロナウイルスの感染爆発が起こる可能性があるのに五輪大会をやらざるを得ない、というふうに聞こえる。コロナがもたらす損害が賠償額より小さいのかは、普通に考えただけでも分かる。コロナ被害の方がはるかに大きいはずだ。
この理由が本当なのか。同誌は逆の話を続けた。「中止保険というのがあって、IOCも組織委も入っている」と言うのだ。「組織委の高橋治之理事」が1月に同誌に語っている。「これで多少は賄えるんだよ。実際、延期になった時も保険が下りて」いた。
これでは話が違ってくる。そうなると、菅首相が開催に拘る理由は何なのか。日本から中止を言い出せない契約になっているのか。それが実際はそうでもないという。開催契約によれば、「IOCにのみ中止決定権があり、日本側に開催義務を免除する条項などは記されていない」のだが、去年の延期決定では、「安倍晋三首相(当時)からIOCのバッハ会長に申し出」て実現している。だから「中止を訴えることもできる」と「スポーツ社会学が専門の一橋大学・坂上康博教授」は同誌に説明した。
するとますます菅首相の拘りの理由が分からない。首相は「疑問に答える必要がある」と記事を締めくくるが、理由が分かっていながら「答えは次回に」と焦(じ)らされているような締め方だ。
◆見た目の数に要注意
「コロナを正しく知って恐れろ」「敵の正体を冷静に見極めよ」と一貫して訴えているのが週刊新潮(5月20日号)である。インド変異株が日本でも増えており、5月7日には1日で「41万人」が感染したと報じられた。日本の「6266人」(14日)に比べたらべらぼうに多い。
だが、人口比で見れば、インド13億6640万人のうちの41万人は人口の0・03%。日本の6266人は0・006%である。同誌5月20日号ではイギリスの例を挙げて、「1月に1日6万8000人の感染者数を記録した」が、これは人口6680万人の0・1%にも当たり、インドや日本とはケタが違って多い。これらは見た目の数字に惑わされてはならないことを教えている。
さらに同誌は「東京大学AI生命倫理・疫学解析研究コア統括責任者の伊東乾氏」の、インド株の「感染は広がりやすい代わりに、致死率が少ない」ため、「変異株を侮ってはいけませんが、パニックになる必要はありません」というコメントも載せた。
「変異」という言葉には人を怯(おび)えさせるものがあるが、ウイルスは「1年で1万株以上の変異が現れて」おり、変異するのが当たり前であることも伝えている。
◆嫁姑問題の発生懸念
秋篠宮眞子内親王殿下のことにも触れておきたい。週刊新潮は「“降嫁”で待ち受ける『佳代さん』との“嫁姑問題”」の記事を載せた。副題に「『眞子さま』は不幸にならないと目が覚めない!?」とある。小室圭さんと母親の佳代さんの「母子の密着度」が高く、嫁姑問題が起きるのは必至だという見方だ。この時、圭さんはどっちの肩を持つかと言えば、「コラムニストの辛酸なめ子氏」は、「ひたすら佳代さんを庇(かば)おうとするでしょう」と予測する。われわれ庶民も同じく、そう思う。目をお覚ましになることを切に願う。
(岩崎 哲)