40年超運転でも立派に機能する原発を「老朽原発」と決め付ける朝日

◆貶める意図は明らか

 年を取った人を最近は「老人」と言わない。老(ろう)には古びた、衰えたという意味があり、高齢者に嫌がられるからだ。ましてや朽ちると合わせて「老朽」と呼べば、ヘイト(誹謗(ひぼう)中傷)だ。なぜなら元来、老朽とは次のことを言う。

 「老いて朽ちること。年をとり、または古びて、役に立たないこと。また、そのような人または物」(広辞苑・第5版)

 朽ちて役に立たないことを老朽というわけだから、人に対して用いるのは憚(はばか)られる。モノについてもしっかり動き、機能しているときは使わない。それを敢(あ)えて言う場合、たいがい貶(おとし)める意図が秘められている。

 運転開始から40年を超える原発はどうか。本紙には「(原発の)40年超運転は欧米を中心に広く実施されている。国際原子力機関(IAEA)などによると、世界の原発444基のうち約3割の123基が該当する。米国には46基あり、うち4基は80年運転が認められている」とある(30日付社説)。世界の原発の3分の1が40年を超えても現役で動いている。立派に機能しているから「老朽」とは呼べまい。

 ところが、朝日は平然と「老朽原発」と言ってのけている。福井県の杉本達治知事が40年超えの関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)と高浜原発1、2号機(同県高浜町)の再稼働に同意すると表明すると、朝日4月28日付夕刊は1面トップで「老朽原発再稼働 福井知事が同意」とベタ白抜き文字を躍らせた。締め切り間際のニュースだったようで紙面にぶちこむような割り付けだ。まるで大事件である。

◆記事中で「老朽」連発

 翌29日付朝刊の1面トップには「40年超原発 再稼働へ 国内初 福井知事が同意」とある。ここでは見出しに「老朽」がない。総合面と社会面に展開した関連記事にも見出しに「老朽」がない。ただし本文では書き連ねている。どうやら意図的に見出しから「老朽」を外したようだ。

 すでに朝日は再稼働同意を見越して28日付社説で論じていた。そのタイトルは「老朽原発 再稼働は認められない」。つまり社としては「老朽原発」と断じているのだ。ところが、見出しの表記は巧妙に使い分けている。

 記事の中で「老朽」を連発するのは朝日だけだ。同じ反原発派でも毎日は「40年超原発」と書き、記事にも「老朽」はない。地方紙の社説を見ると、左派路線が顕著な北海道、信濃毎日が見出しに「老朽」を使っているが(いずれも29日付)、他紙にはない(1日現在)。

 朝日だけが「老朽原発」に固執しているのだ。その本性は29日付福井版で一層、浮き上がってくる。杉本知事の会見内容を詳報するが、添えられていたのは福井県庁前での「老朽原発の再稼働に反対する市民ら約30人」の街頭活動の写真だ。説明文は「代わる代わるマイクを握って、杉本達治知事の同意表明に『市民の不安を無視している』『見直せ』などと抗議の声を上げた」と長ったらしく書く。知事会見に反対派の写真をぶつけているのだ。

◆市民の正体は共産党

 だが、市民の「正体」には一言も触れない。それで共産党機関紙「しんぶん赤旗」29日付を見ると一目瞭然。「オール福井反原発連絡会」のメンバーで、共産党福井県委員長、共産党県議、共産党衆院候補が「『老朽原発の再稼働など許さない』と訴えました」とあり、朝日同様の写真が載っている。何のことはない共産党の活動だ。

 だいたい「老朽原発」と表現するのは共産党や左翼集団と相場が決まっている。朝日も同じ穴の狢(むじな)だから「老朽原発」と書くのだろう。ただし、見出しに掲げ過ぎると本性がばれるので使い分ける。そういう魂胆が見え見えだ。

 これで一般紙とは恐れ入る。ジャーナリズムとしては朽ちて役立たず。朝日にこそ「老朽」を冠するのが相応(ふさわ)しい。

(増 記代司)