立憲民主と共産の野合による「民共路線」の再現を狙う懲りない朝日
◆外交・安保に触れず
それにしてもこの存在感の薄さはどうだろう。最大野党の立憲民主党が1月下旬、定期党大会を開いた。昨年9月の「結党」後、初となるものだが、関心を抱いた国民はどれほどいたか。テレビニュースや新聞記事での“ちょっと見”が関の山だろう。
党大会で枝野幸男代表は「政権の選択肢となって自公政権を倒し、立憲民主党を中心とする新しい政権をつくる決意だ」と訴え、記者会見では「どこかで私なりの政権構想を提示したい」と語った。どこかで? 私なりの? いやはや、これでは枝野個人商店だ。もっとも社民党系まで抱えた寄り合い所帯。党内論議では船、山へ登るか。
というわけで、少なからず新聞は論評に値しないと判断したようだ。社説を掲げたのは朝日1紙だけ。「政権の選択肢へ正念場」と自ら鼓舞するようにこう言った(2月2日付)。
「党綱領には、ジェンダー平等の確立や原発ゼロ社会の実現など、自公政権との対立軸になる基本方針が示されている。これをどう肉付けし、現実味のある政策として国民の支持や共感を得られるかがカギとなろう」
ジェンダー平等と反原発。思わず、それだけですか、と言いたくなった。国政の要である外交・安保について一字一句も書かれていないのだ。内向き姿勢ここに極まれり。そんな感がする。米国でバイデン政権が発足、中国は強権姿勢を一層強め、尖閣諸島は風雲急を告げている。北朝鮮の核軍拡も終わりを知らない。コロナ禍で世界情勢が激変する中、外交・安保抜きで政権の選択肢とは笑わせる。
◆反原発軸に共闘促す
立憲民主党は「新党」といっても旧民主党の焼き直し、いや、右派が国民民主党に流れたから、その分、左派色を増し、外交・安保に不安を抱かせる。だから支持率は5%(読売調査)程度に低迷しているのではないのか。
旧民主党政権は沖縄・普天間の在日米軍基地を「少なくとも県外」と唱え、日米同盟を揺るがした。おまけに140人以上の民主党議員がそろって北京詣でし、胡錦濤主席(当時)と喜々として握手・記念撮影した。その破廉恥さは銀座の高級クラブ詣での比ではあるまい。
尖閣諸島沖の領海内で発生した海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件(2010年9月)では菅直人首相の「弱腰」が中国を増長させた。そうした外交・安保の総括なくして立憲民主党に政権をうんぬんする資格はない。
それを問わずに朝日はジェンダー平等と反原発だけをもって政権の選択肢とする。そういえば、最近の共産党もこれを二枚看板にしている。それで読めた。朝日社説には共産党のキの字もなく、「野党間の候補者調整を急がねばなるまい」とするが、反原発なら電力総連や電機連合が支持する国民民主党とは相いれない。だから反原発を主軸にした「野党間の候補者調整」とは共産党との候補者調整にほかならない。つまり朝日は共産党との共闘を促しているのだ。要するに共産党の「支持や共感を得られるか」が最大の関心事なのだ。
だから社説はこう言うのだ。
「16年夏の参院選以来続く共闘の枠組みを維持するため、汗をかく必要がある」
同参院選では民進(当時)と共産、社民、生活の4野党が地方区の1人区すべてで統一候補を擁立し、政策協定で改憲阻止をうたった。巷間(こうかん)では「民共路線」と呼ばれた。これを朝日は「野党共闘 わかりやすくなった」と絶賛した(同年6月10日付社説)。どうやらその再現を狙っているらしい。
◆政策の違いを棚上げ
だが、選挙で民進党は惨敗した。有権者は民共路線に鉄槌(てっつい)を下したのだ。政策の違いを棚上げにしての「共闘の枠組み」はすなわち野合だ。立憲民主党がいまだ政権構想を明示できないのは野合の下心があるからだろう。朝日もまたしかり。懲りない面々がいくら汗をかいても、とうてい信用できない。
(増 記代司)