的外れの非科学的な世論調査に禁じ手の巧妙な「罠」を仕掛ける朝日
◆アナウンス効果利用
産経とFNN(フジニュースネットワーク)が世論調査を再開させた。昨年、データの不正入力問題で謝罪、休止に追い込まれた。不正防止策を徹底して約半年ぶりに始めたという(1月26日付)。
その菅内閣の支持率を見ると52%。他紙の1月調査と比べるとかなり高い。朝日(25日付)と毎日(17日付)は33%なので20%も差がある。読売の39%(18日付)、共同通信の41%(10日配信)と比べても高い。う~ん、再開の「ご祝儀相場」?
元来、産経の内閣支持率は高め、朝日は低めだ(自民党政権で)。調査の電話で「産経」と聞くだけでリベラル派は拒絶反応を示し、逆に「朝日」は保守派が断る。どうしても新聞の世論調査の回答は各紙のバイアスがかかっている。そう見るべきだろう。
米国では世論調査が民主主義の土台を揺るがしている。大統領選挙でリベラル勢力が世論調査のアナウンス効果を巧妙に利用したとされるからだ。昨秋、本紙が伝えていたマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事の発言が思い起こされる。
「世論調査は時代遅れだ。8トラックテープのようだ。雄牛の下に牛乳バケツを置くのと同じくらい無意味だ。世論調査結果を聞くのはもうやめよう。無意味だ。『ああ、投票に行っても意味がない』と人々に思わせるだけだ。16年と20年の大統領選でひどく的外れだったすべての非科学的な世論調査手法に頼らないようにしなければならない」(「ワシントン・タイムズ」11月5日付=本紙・同8日付「対訳WT」)
サウスカロライナ州で勝利した共和党のリンゼイ・グラム上院議員は、こう語っている。「すべての世論調査機関に言いたい。あなたがたは自分で何をしているのか分かっていない」。グラム氏は、接戦と言われながら11ポイント差で再選を果たした。ことほどさように世論調査はいかがわしいというわけだ。
◆質問順で回答を誘導
日本はどうだろう。朝日の金曜日付夕刊に「世論調査のトリセツ」と題するコラムが毎週、載っている。1月29日付は「1月支持率 政権の命運握る?」とある。世論調査があたかも生殺与奪の権を握っているかのようだ。その中で安倍前政権が7年8カ月の最長につながった理由をこう書く。
「その裏には、政権に難題が降りかかるたびに、野党の追及をかわしながら支持率の低下を抑えてきた成功体験がありました」
そんな成功体験もあるだろうが、長期政権になったのはひとえに国政選挙に勝ち抜いたところにある。それも5回も。なぜか朝日はそれに触れず、かわした(身を翻して避ける=広辞苑)と言う。要するに選挙結果を受け入れていないのだ。米国で議会占拠暴動を引き起こした一部過激派とそっくりではないか。
朝日の世論調査には巧妙な「罠(わな)」が仕掛けられている。例えば、禁じ手の「キャリーオーバー効果」。前の質問の内容が後の質問に影響を及ぼす一種の誘導だ。朝日が昨年12月に実施した世論調査の1問1答(1月12日付)にそれが見られる。
コロナ禍についての質問の後に、「自分の身に大きな自然災害が降りかかると思うか」「災害に備えて3日分の水や食料を備蓄しているか」「ハザードマップを確認したか」「東日本大震災の教訓を十分に生かせているか」などと災害の質問を連ね、その直後に唐突に「原子力発電を利用することに賛成か」と聞く。
これではコロナ禍と震災の恐怖心が原発の是非に誘導される。回答は賛成29%、反対57%。これで原発反対が6割と言い募るつもりか。排出ガスゼロや安価で安定的な電気の供給を問えば、違った結果が出るのではないか。そこに世論調査の危うさがある。
◆「朝日のトリセツ」を
的外れの非科学的な世論調査を当てにすべきでない。民主主義を守るために世論調査のトリセツ、いや「朝日のトリセツ」を心得たい。
(増 記代司)