共産党結党100年を迎える中国の脅威・リスクを特集したエコノミスト

◆「人質」にされる外資

 米国では1月21日、バイデン新大統領が就任した。トランプ前大統領の時代に悪化した米中関係の軋轢(あつれき)は、新大統領になっても当分続くと見られている。とりわけ、今年は中国共産党100年の節目を迎える。2047年には中国建国100周年を迎え、習近平政権は今後も「強国中国」化路線を継続していくことは必至だ。

 そうした中で、週刊エコノミスト(1月19日号)は、中国リスクについての特集「危ない中国 共産党100年の呪縛(じゅばく)」を企画した。

 1921年、毛沢東らによりスタートした中国共産党はこの間、幾多の路線を変更しながらも一党独裁を堅持してきた。毛沢東が亡くなった2年後の78年に鄧小平が「改革・開放」政策を打ち出し、資本主義的な要素を取り入れ、市場改革を進めていった。しかし、共産主義による支配体制そのものはいまだに変えていない。これについて同誌に寄稿している大﨑雄二・法政大学教授は「歴史的に獲得した反帝国主義の正義の看板『共産党』と『社会主義』という『屋号』は今後も変わらないだろう」と指摘、「改革・開放」の真意について、「イラクもソビエトも外資を入れていなかったからやられたのだ。外資を『人質』とし、西側の経済と一体化してしまえば、(西側諸国は)絶対に敵対できないという一党支配体制防衛のための『兵法』だった」(同)と説明する。

 今では世界経済第2位の国内総生産(GDP)、世界3位の軍事力を背景に南シナ海、東シナ海では縦横無尽に覇権主義を見せ付ける中国だが、今後のわが国の中国リスクとしてエコノミストは、①中国の環太平洋連携協定(TPP)参加②輸出管理法で米中の“板挟み”となる日本③国際基軸通貨を目指す中国元④米国を凌駕(りょうが)する軍の近代化一を挙げ、これらの要素が日本を脅かすという。

◆台湾締め出しを狙う

 中でも中国のTPP参加の真の狙いは台湾締め出しにあると説明。「RCEP(包括的経済連携)不参加の台湾は域内貿易で取り残された。台湾は(TPPという)中国不在の枠組みに活路を求めていたが、このままではTPP参加の芽も消されてしまう」(遊川和郎・亜細亜大学教授)とし、さらに「(行き詰っている)『一帯一路』の軌道修正を図るのが(中国の)隠れた狙いである」(同)と分析する。

 また、松本はる香・ジェトロ東アジア研究グループ長も、「TPP加入検討は、…台湾を国際的に孤立させたい思惑が間違いなくあろう。今後は台湾の国際的な孤立を防ぐことが国際社会の重要な課題の一つであり、中国がTPPに参加する前に台湾をその枠組みに入れることを検討する必要があろう」と強調。さらに「中国が個人独裁を強め、強権的な国家になりつつある今、民主主義という共通の価値観を共有する台湾を守ることは米国の新政権はもとより、日本にとっても非常に重要なテーマとなる」(同)と明言する。

 中国は台湾を「核心的利益」と位置付け、軍用機が台湾海峡の中間線を越えるなど頻繁に圧力を強めており、「中台間の偶発的な衝突の危険性」は高まっていると松本氏は綴(つづ)る。

◆対中国観の見直しを

 このほかにエコノミストでは、中国出身の作家で日本大学芸術学部教授の楊逸氏が日本の対中国観の見直しを迫っている。「(経済で)中国に依存し続ければ、結局は中国に一番おいしいところを持っていかれてしまいます。コロナ禍をきっかけに…中国依存から転換する道を考えるときです」という。今回のエコノミストは、全般的に中国の脅威・リスクを客観的に分析している。

 かつて鄧小平は「白い猫でも黒い猫でも鼠(ねずみ)を捕ってくるのがいい猫だ」といって資本主義を導入した。習近平主席は共産主義を堅持しながら、かつての明帝国を夢見て世界の覇権国家を目指している。対して日本は中国の動向を注視しながら、さらに価値観を共有する国々との連携を今まで以上に深める時が来ているようだ。

 (湯朝 肇)