新型コロナウイルスのワクチン接種、リスク判断を読者に投げたアエラ
◆「儲からぬ」重症患者
日本は病床数が多く、半面、欧米に比べて感染者数は桁違いに少ない。なのに「医療崩壊」が叫ばれている。何が問題なのか。週刊現代(1月23日号)がズバリ切り込んだ。「医療崩壊のウソと現実」の記事である。
結論から言えば、「儲(もう)からないから」だ。日本では8割が民間病院で、政府や知事は彼らに指示する権限はない。病床は「余っている」という。だが、新型コロナウイルス感染の重症者を受け入れれば、専門医は限られる中、人員は取られ、ベッドは占められる。設備も拡充し、しかも他施設と隔離しなければならない、等々で、「診療報酬」の入る他の患者受け入れより格段に“割が合わない”のだ。
現在、重症者を受け入れているのは主に国公立病院などだが、それを横目にベッドに余裕のある民間病院は少なくないという。日本医師会はしきりに医療崩壊を叫ぶが、自身が経営する個人病院や医院では崩壊は起きていない、というケースもあるのだ。
事業である以上、利潤を追求するのは当然で、もともと「医は算術」ともいう。政府は今になって1床当たり「1950万円の補助金」を出すと言っているが、「中規模病院の医師」は同誌に「それでも重症者の受け入れは、病院にはデメリットが大きい」と話す。いったい政府は医療現場をどれほど把握しているのか。
◆解決策は「5類」指定
ならば、どうしたらいいのか。「東京大学名誉教授で『食の安全・安心財団』理事長の唐木英明氏」が同誌に「新型コロナを感染症法指定の2類から外すべきだ」と語る。
「感染症の5類に指定されているインフルエンザは、日本では毎年約1000万人の患者が出ます。それでも医療崩壊が起きないのは、感染症指定病院だけでなく、全国のクリニックなどで対応に当たれば十分対応できるキャパシティがあるからです」と。
一貫して「2類から外して5類に」と主張している週刊新潮も1月28日号「死神の正体見たり」の記事で、この主張を繰り返した。「東京脳神経センター整形外科、脊椎外科部長の川口浩医師」が「インフルエンザと同じ5類になれば、受け入れる医療機関は増えるはずです」と語っている。
政府はどうして現場の声を聴いて「5類」に指定しないのだろうか。新型コロナが“未知”の存在であり、まだワクチンも確立されていないからだろうとは想像つくが、新潮も現代も、この点に関する政府、厚生当局、医師会の考え方を伝えてほしい。
◆不安抱える医師たち
アエラ(1月25日号)が「医師の本音」を特集していた。てっきり「5類へ」かと思いきや「ワクチン」だ。政府はワクチン接種の準備を進めており、2月には医療従事者らへの先行接種が始まる、という報道もある。しかし、その医師たちがワクチンへの不安を抱えている、というのがアエラの記事。
同誌と「医師専用のコミュニティーサイトを運営するメドピア」が現役医師にアンケート調査を行った。それによると、ワクチンを「接種する」が31・4%、「種類によっては」が27・3%、「しない」が11・8%、「わからない」が29・5%だった。いずれにせよ接種するとしたのは6割弱にとどまり、4割強がためらっている。
「家族に接種を勧めるか」では、「勧める」が27%、「勧めない」15・5%、「分からない」34%で、実に半数が家族には打ちたくないと考えているのだ。
コロナワクチンに限らず薬には一定程度、副作用が出る確率はある。同誌は既に世界では1月13日現在「3257万人がワクチン接種を受けた」とし、その中で副作用が出た人は「インフルエンザの不活化ワクチンの発生頻度より10倍高い」と伝え、そしてこれが「想定の範囲内」(米疾病対策センター)であることも添えている。
「東京大学医科学研究所の石井健教授」の「接種のリスクとベネフィットを冷静に判断して決めてほしい」の言葉で結んで、判断を読者に投げた。
(岩崎 哲)