電力需給逼迫で「課題浮き彫り」の再生エネにこだわり説得力欠く朝日
◆不可欠な原発再稼働
厳しい寒さが続く中、暖房需要の増加により電力需給が逼迫(ひっぱく)している。火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)の不足が直接の要因だが、背景には現状のエネルギー供給体制の問題がある。
この問題でこれまでに社説で論評したのは産経、本紙、朝日の3紙。見出しは次の通りである。産経13日付「政府の節電要請が必要だ」、本紙17日付「大規模停電防止に尽力せよ」、朝日18日付「需給安定への教訓に」――。
産経は、全国の大手電力会社で構成する電気事業連合会が利用者に効率的な電気使用を求めたのに対して、「無理のない範囲で企業や国民も節電に協力する必要があるが、政府がこれを正式に要請していないのは疑問である」と指摘して、「危機管理の姿勢が問われるのではないか」と見出しの通り訴えた。
政府は今、新型コロナウイルスの感染拡大防止へ、11都府県に緊急事態宣言を発令し、飲食店に営業時間の短縮を、11都府県民には不要不急の外出自粛を要請している。そのような中での、節電のさらなる要請には遠慮があるからなのかは分らないが、その是非には判断が分かれよう。
この問題はともかく、同紙の「安定的な電力供給を確保するには、安全性を確認した原発の再稼働も不可欠である」との主張には同感である。同紙が強調するように、政府は早期再稼働を支援すべきであろう。
この点は本紙も同様である。本紙は、原発の再稼働が停滞していることも今回の電力不足につながったと言える、として政府に「原発がスムーズに再稼働できるよう努めるとともに、原発新増設の方針を明示すべきだ」と訴えた。
◆安定的な供給体制を
本紙がさらに指摘したのは、降雪によって太陽光発電の発電量が急減したことも一因となっていることで、「天候に左右される欠点が改めて浮き彫りとなった形である」と強調した。これも然(しか)りである。
朝日も、政府が主力電源化を目指す再生可能エネルギーでも、「課題が浮き彫りになった」との見解を示した。
もっとも、その理由は「国内の再エネが太陽光に偏っていると不安視する声は、以前からあった」というもので、本紙のように、「天候に左右される欠点」を明確には指摘しない。
そのためか、朝日が説いたのは「晴れていなくても発電できる風力の増強などが大切だ」「蓄電池など電気をためる技術の開発も欠かせない」である。産経や本紙が指摘した原発の再稼動や新増設の文言は出てこない。
確かに朝日が指摘する太陽光以外の再生エネや高性能蓄電池などの開発の必要性は認めるが、大事なのは電力の安定供給にどれだけ資するかという点である。
朝日は、「今回の教訓ももとに、再エネを最大限活用できる電源の最適なバランスを追求することで、将来原発に頼らずに脱炭素社会を実現する道が開けるだろう」との文章で社説を結んだが、現実の安定供給をどう確保するか の方策なくしては「将来」も語れないだろう。
産経も、朝日と同様に、太陽光や洋上風力などの再生エネの拡大で、政府が2050年までに脱炭素社会の実現を目指すことを記すが、「それには安定的な電力供給体制を確立することが前提である」と強調する。現実的な政策提言として責任ある姿勢と言える。
◆反原発の姿勢再考を
朝日は、今回の電力需給の逼迫について、国内発電の4割を占めるLNG火力の稼働が思うように上がらないのも「誤算だ」とした。
その上で、経済産業省が今冬を前に原発の再稼働が進んでいない現状でも厳冬を乗り切れるとしたことを挙げ、経産省や電力業界に今回の問題の原因究明と再発防止の努力を求めたが、その前に、同紙が嫌う原発とその再稼働を進めないことに「誤り」がないのかどうかが重要だろう。(床井明男)