新型コロナ第3波、行動制限ではなく医療体制の拡充を訴える新潮
◆二つ約束破った政府
新型コロナウイルス感染の第3波が来ている。政府は1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)に緊急事態宣言を出した。大阪、京都、兵庫の3府県も宣言を出すよう政府に要請、愛知県も要請を検討している。
宣言の内容は「行動・移動の制限」だ。飲食店が感染原因だとみて、午後8時には店を閉めろと言い、従わなければ店名を公表するとしている。だが、飲食店の営業時間短縮で行動制限ができるのか、はなはだ疑問だ。もちろん、7割のテレワーク化、県をまたぐ移動の自粛、なども同時に要請はしているが、人の移動がこれで減った感じはしない。
一方、多くのメディアは時短要請され悲鳴を上げる飲食店を取り上げる。倒産や経営者らの極端な選択を心配しつつ、政府の施策を批判する。「ならばどうしたいいのか」は考えない。当事者意識ゼロである。対案のない批判は無責任に通じる。
政府の行動制限方針の根拠を伝えているのが週刊文春(1月14日号)だ。「8割おじさん」こと「京都大学大学院医学研究科・西浦博教授」のインタビューを載せた。
西浦氏は「感染拡大を防ぐには、人と人の接触を八割減らすことが絶対必要」とし、「第二波の襲来を的中させ」さらには「第三波は必ず来る」(同誌7月30日号)と警鐘を鳴らしていた。文春としては、「あれほど言ったのに」という思いだろう。それで、西浦氏に改めて「120分」もの「独白」をさせたのだ。
西浦氏は、変異株の出現で感染爆発が起こっている英国などの例を挙げて、今回の時短要請だけで済まず、「『外出禁止令』など強制力を持った接触削減策を行わねばならない可能性もなくはない」と厳しい見方を示した。
とりあえず、現状の抑え込みは必要だ。しかし、同時に経済も回していかねばならない。宣言では学校は閉めず、大学入試も行うとしているが、8時で閉める店はたまったものではない。当然補償がいるが、同誌はこれについては触れていない。
◆対策怠った故の人災
一方、行動制限よりも、医療体制の拡充をやっておくべきで、現在の状況はそれを怠った人災である、というのが週刊新潮(1月14日号)である。「いまそれを言うか」と思われるかもしれないが、同誌は一貫してそう報じてきた。
冬になれば感染が増えることは分かっていたし、第3波が来ると専門家は予測していた。ならば、その間にできたことはあっただろう、というのが同誌の主張で、そのできることの一つが病床の確保など医療体制の整備だ。
「東京大学大学院法学政治学研究科の米村滋人教授」は、「緊急事態宣言を発出するのではなく、医療機関のキャパシティを広げるために、全国規模で人員を集め、対応しきれていない医療機関に差配するなどの対策をすべきでした」と述べ、「国際政治学者の三浦瑠麗さん」は医師会とケンカしてまで「医療体制の拡充」を進めてこなかったのは、政府が「医師会に気兼ね」していたからと批判した。
感染者数の増加に対応した医療体制があれば、「医療崩壊」を恐れることはなかったのである。どうして第1波以降、それができなかったのか、まさに「怠慢」と批判されても仕方がない。
◆二つ約束破った政府
同誌は政府が二つ約束を破っているという。一つが「アビガンの承認」だ。自国製の薬が外国で承認されているのに、なぜ日本で承認されないのか。副作用など拙速を恐れる厚生当局の「責任逃れ」だと断じる。第二が「指定感染症の第2類相当から外す」ことだ。年齢や症状・基礎疾患の有無など条件に応じたきめ細かい対応は必要だが、「5類相当」にしておけば、医療機関の圧迫は免れただろう。
新潮のこの記事には「政治部記者」と名前のない一人を含め12人ものコメントを載せている。力の入れようが窺(うかが)えるというものだ。西浦氏1人で同じ4㌻を作った文春と比べると、中身の濃さはおのずと知れる。
(岩崎 哲)