「わいせつ教師」が学習塾に流れることも阻止せよと訴える新潮

◆日本版DBS創設を

 週刊新潮12月17日号で「過去最多!『わいせつ教師』は二度と子どもに近づけるな」を特集している。12月2日、自民党の野田聖子幹事長代行らが、子供の性被害防止を求める要望書を上川法務大臣に手渡した。

 その中で、保育士や教員など子供と接する仕事に就く前に、性犯罪に関わったことがないか、チェックする仕組みを整備し、保育教育従事者が「無犯罪証明書」を取得できるように求めている。英国では既に前歴が速やかに開示される前歴開示及び前歴者就業制限機構(DBS)という機構が有効に機能しており、それに倣った「日本版DBS」である。

 要望書の内容にいち早く反応したのが、この記事。「危機に瀕する子どもたち 『無犯罪証明書』提出は当然」「一言で言えば、性犯罪歴のあるわいせつ教員らを、教育や保育の現場に二度と近づけないようにする仕組みを目指そうというのだ。至極当然である」と。要望書を提出した有志議員の一人である三原じゅん子参院議員にも聞いて「(前略)対策は急ぐべきであり、来年の通常国会での立法を目指しています」という言葉を引き出している。

 2018年度、わいせつ行為などで懲戒免職となった公立小中高などの教員は163人と過去最悪だ。記事は、「その『元凶』とも言えるのが教員免許法」と断じる。「(同法では)わいせつ行為などで懲戒免職になり免許を失った教員でも、3年後には免許を再取得できる」、しかも「加害教員が処分を受ける前に依願退職した例などもあり、これらは把握しきれないため、教育現場での子どもの性被害の実数はその数倍、数十倍である可能性がある」(教育ジャーナリスト)という。

 教員免許法については、ほかに「官報対応」の不備がある。同法により、懲戒免職処分を受け教員免許を失った教員に関しその旨が官報に記載されるが、肝心の処分理由が記されない。このため「官報を見ただけではわいせつ教員かどうかを見抜けないのだ」。

このため保育士や教員が子供へのわいせつ行為で処分を受けても、免許を再び取得し、処分歴を隠して別の職場で採用されるケースが後を絶たないというのである。

◆圧倒的に弱い子供ら

 同法改正とともに、記事では、わいせつ教員について「以前と同じ職場に戻すことには絶対に反対」と念を押す。「圧倒的に弱い立場の子どもたちが、教室などの閉ざされた空間にいる。そうした環境に、再犯リスクの高い性犯罪加害者を戻すことが危険であるのは明らかだからです」(精神科医の福井裕輝氏)。

 同誌10月1日号の同様のテーマの記事では次のような指摘もある。「実際には学校にいられなくなった元教師が学習塾に流れてきて同じような行為を働いていたりします。小児性愛の傾向がある者には医学的な治療・措置を施し、累犯を防ぐことのほうが現実的」(精神科医の和田秀樹氏)。ちなみに英国では、性犯罪全般の前科があると、スクールバスの運転手の仕事にも就くことができないそうだ。

◆聖職から労働への弊

 ただし、わいせつ教師の教職からの締め出しに、彼らの情報を追及するだけでは不十分で、当の教育委員会の実行力が問われる。各教委は、とかく噂(うわさ)のある先生に、自分たちの自治体から早く出て行ってもらうために、噂を隠して異動の資料作りを行うケースもあると聞く。

 また古い話だが、筆者が小学生の時、担任の女性教諭が万引きを働き、警備当局の説諭程度で済んだが、それがため教職を辞め、市役所勤務の彼女の姉も退職した。当時、教師は市民に信頼され、ステータスもあったから、辞職やむなしだった。

 しかしこの間、教職は「聖職」から単なる「労働」になったとしばしば言われ、残念だ。教員の社会的地位の低下や教師自身のプライド失墜も伴って、これらがわいせつ事件増加の背景にあるのではないか。週刊新潮の記事にはないが、こういった角度からの追究も必要だ。

(片上晴彦)