「世界に誇れる偉業」とたたえた「はやぶさ2」の意義と今後を問う各紙

◆優れた技術力の証し

 探査機「はやぶさ2」が、小惑星「りゅうぐう」の石や砂が入っているとみられるサンプルを無事に届けてくれた。6年の長きにわたるミッションを、大きなトラブルもなく見事に果たした。

 各紙もこれを称(たた)える社説を掲載した。社説見出しを挙げると次の通り。7日付読売「世界に誇る探査技術を磨け」、朝日「強みを生かし、着実に」、8日付産経「『挑戦』の大切さを学ぼう」、日経「応用範囲広いはやぶさの技術」、本紙「日本の宇宙探査の真骨頂示す」――。

 各紙とも「世界に誇れる偉業」「初代はやぶさに続く快挙」などとと称える言葉が並ぶ。特に読売は、金属弾を撃ち込んでつくったクレーター付近に2度目の着地をして「地中の試料を採った価値は高い」と絶賛。そして、そうした作業を成功させたことは「日本の優れた技術力の証しである」と強調した。

 また、費用対効果の観点から辛口の評価が多い日経も、「宇宙で有用な資源を探したり持ち帰ったりする基盤技術を手にした意味は大きい」とべた褒めで、無論、筆者も同感である。

 称える点では各紙同様だったが、その意義付けや今後については若干の違いが出た。

 読売は「日本は、今後も無人機探査を継続することで、これまで培った技術に磨きをかけ、次世代の若手を育てていかなければならない」とした。「将来、各国が資源開発を狙う月面探査では、利用価値が高い特定の場所への精密な着陸技術が求められる場面が出てくるのではないか」との視点からである。

◆「挑戦」の大切さ示す

 朝日も、米中など大国が天体からの試料採取にしのぎを削る中、「日本は技術の優位性と経験を生かして、こうしたプロジェクトを先導できる立場にある」と指摘。

 加えて、費用負担を減らしつつ、各国の特徴を生かした、単独ではなし得ない試みが可能となる点で、近年、宇宙探査における国際協調が重要性を増していることから、「そのためにも、国民の理解の下、長期戦略を掲げて予算を確保し、人材を育成していくことが肝要だ」と強調する。

 今回見事な成果を挙げたはやぶさ2計画も、初号機の「奇跡の生還」がなければ、頓挫していた恐れがあったことを忘れてはならない、というのが同紙の理由で、確かに尤(もっと)もな指摘である。

 産経は今回のプロジェクトを率いた津田雄一氏が語った「初代で学んだことをすべてつぎ込んだ」という言葉を引用して、将来を担う世代に対し、見出しの通り、「できることは全部やる」という精神と「挑戦」の大切さをくみ取ってもらいたい、とした。

 また、世界の宇宙開発は今後、月や火星の有人探査が主舞台になっていくとして、「日本としては、はやぶさで培った無人探査技術をさまざまな局面で生かし、存在感を発揮することが重要だ」と強調。科学技術や産業の広い分野に、はやぶさの挑戦と快挙が波及することを期待する、で社説を締めくくった。

◆民間への技術移転を

 これらより具体的なのが日経で、「日本の優れた姿勢制御やセンサー技術を、今後の宇宙資源開発に戦略的に役立てるべきだ」と強調した。はやぶさ2で使われた高性能イオンエンジンや試料採取装置、狙った場所に正確に降りるための制御技術は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が民間企業とも協力して磨き上げた技術だからである。

 宇宙で有用な鉱物やエネルギー資源を「現地調達」するための探査活動は一段と活発化するだろうとして、同紙は「日本が基盤技術を押さえられれば、国際プロジェクトなどを有利に進められる可能性がある」とみて、第3、第4のはやぶさのほか、民間から大胆な探査計画を募るのも一案と、積極的な提案もする。最後に宇宙産業の発展のために民間への技術移転の加速を求めたが、経済紙らしい指摘である。

 9日付では東京が、「天体衝突から地球守れ」との社説を掲載した。

(床井明男)