米大統領選でトランプ氏の“危機感”を解説した「サンデーLIVE」

◆現職批判のサンモニ

 米大統領選挙の投票日が目前に迫った。共和党の現職候補、トランプ大統領の再選か、民主党候補のバイデン前副大統領が当選するのか、米国だけでなく全世界が関心を寄せている。

 世界的流行(パンデミック)となった新型コロナウイルス感染の最も深刻な国で、横紙破りな大統領が2期目に挑みながら自身も感染するなど、異例な展開はテレビの報道番組を賑(にぎ)わし、加えてトランプ氏を支持する出演者は殆(ほとん)どいない。

 例えば10月25日放送のTBS「サンデーモーニング」を視(み)ると、政治学者の姜尚中氏は「もし幸運に政権交代が起きた場合に」との前置きでバイデン氏支持を示唆しながらも、トランプ氏が「後戻りできないことをするのではないか」と懸念した。

 法政大学総長の田中優子氏(遠隔出演)は、気候変動問題に言及しながら「バイデンさんはパリ協定に復帰するということと、気候変動への取り組みを雇用政策に繋(つな)げていく政策を持っている。どちらがわれわれにとって良いかは明らかな気がする」と述べた。

 朝日新聞編集委員の高橋純子氏は、テレビ討論会でバイデン氏が自分に投票しなかった人にも「私は皆さんを代表する米国の大統領」であると訴えたことに、「民主主義では自分に投票しなかった人の代表であるとの自覚を持つことがリーダーにとって一番求められることだ」と持ち上げた。

 元外交官の藪中三十二氏(遠隔出演)は、「戦後75年間、米国を中心とした国際協調というシステムがあった。それが4年間で崩壊しつつある。あと4年間、トランプさんだと完全に崩壊してしまうという状況だと思う」と述べ、国際政治の危機か回避かの瀬戸際と受け止めているようだ。

 ジャーナリストの青木理氏は「米国のある新聞社が調べたらトランプさん、4年間で2万回うそをついたという。デマは1回広がるとなかなか消えない」などと批判した。

◆訴訟と破産の可能性

 テレビ朝日の「サンデーLIVE」は、「トランプ氏が大統領に執着する本当の理由」という特集をした。トランプ氏が早々と勝利宣言を行い、その後にバイデン支持者の利用が多いといわれる郵便投票が開票されるに従い、勝敗の決着が来年までもつれ込むシナリオを早稲田大学教授の中林美恵子氏と共に米メディアなどを基に解説。

 「トランプ氏が絶対負けられないワケ」として、大統領保護特権が失われて、ロシアゲート疑惑をはじめ、さまざまな疑惑で訴訟を起こされる可能性、信用が失われビジネスでホテル経営など巨額の赤字を補う借金ができなくなり破産する可能性が指摘された。その危機感があるという解釈だったが、「危機感」のある陣営の選挙は強いという説もある…。

 そのトランプ支持者について中林氏は、「民主党の政権になったら社会主義的な政策になってしまうし、経済もめちゃくちゃになるし、これを許さないというのがトランプ大統領の強固な支持層だ。日本から見るとどうしてそういう支持層の人がいるのか分からないというのが、一番のギャップだ」と説明した。

 米大統領選は世界一大規模な政争だ。米メディアの大半はもともと民主党寄りで、あらかじめバイデン氏支持を表明し、バイデン氏優勢が伝えられている。そのメディアぐるみの政争に外国の日本でも巻き込まれて論じてしまうのが、衰えたとはいえ超大国の求心力であろうか。

◆マスコミの落選運動

 米大統領選より規模は小さいが、わが国でもロッキード事件で田中角栄元首相への批判報道が過熱し、作家の野坂昭如氏が元首相の新潟の衆院選挙区で出馬するとマスコミは拍手喝采した。リクルート事件では中曽根康弘元首相の群馬の選挙区にテレビはじめマスコミは乗り込んだ。マスコミは時に“巨悪”を仕立てて事実上の落選運動に走り、有権者はその期待を裏切ることがある。

(窪田伸雄)