米司法省のグーグル提訴で独占の弊害の実態解明や規制求めた各紙

東京、GAFAを批判

 米司法省がグーグルを、反トラスト法(独占禁止法)違反で連邦地裁に提訴した。米IT企業に対する独禁法違反での本格的な提訴は、1998年のマイクロソフト以来、約20年ぶりである。

 これに対し新聞各紙は、そろって社説で論評を掲載した。見出しは次の通りである。

 22日付朝日「独占の実相、解明を」、毎日「ネット寡占の弊害是正を」、産経「公正競争促す規制設けよ」、東京「巨大IT規制の契機に」、23日付読売「競争阻害の実態解明できるか」、日経「デジタル時代の独占とどう向き合うか」、24日付本紙「独占の実態を明らかにせよ」――。

 列挙した通り、保守系紙も左派系紙も、論調に大きな差はなかったが、規制強化を求めるか、求めずに実態解明にとどめるかの違いが出た。

 規制強化をはっきりと求めたのは東京と産経である。特に東京は、今回の提訴を「巨大ITの規制に米国が大きく踏み出したことを意味する」として、提訴が「国際的な規制強化の契機となることを期待したい」と強調した。

 同紙は以前からも、グーグルなどGAFAと呼ばれる米巨大ITに対して批判的である。今回も、①国境を越えて厖大(ぼうだい)な個人情報を蓄積し、その情報が大量に漏洩(ろうえい)したケースもあり批判が高まっていた②巧妙な節税や幹部の高額所得が経済格差を助長しているとの指摘もある③IT企業の核心部でもある電子取引には国境の概念がなく、それが国への納税意識の希薄さにつながっているとの見方もある、などと問題点を指摘する。やや独断過ぎるきらいはあるが、頷(うなず)ける面は確かにある。

 今月6日には米下院司法委がGAFAの市場独占に警鐘を鳴らす報告書を提出しているから、同紙の指摘通り、米政府の方針転換の背景には世論の変化や議会の動きがあったとみて間違いあるまい。

◆国際協調求めた産経

 産経も、自国企業保護の観点から規制強化に慎重だった米政府が、今回の訴訟を契機にIT規制を強めれば、「公正な競争を促すうえで大きな転換点となる」と評価。巨大IT企業は世界各国で事業を展開していることから、「日本を含めた各国が協調し、実効性ある規制を講じることも必要だ」と強調する。

 毎日はこれら2紙ほどではないが、「日欧は保護規制を強化しているが、米国にきちんとしたルールがなければ抜け穴ができかねない」として、「米政府は利用者が安心できる環境を整えるべきだ」との表現で「ネット寡占の弊害是正を」(社説見出し)求めた。

 本紙は、「公正な競争を実現するためにも、裁判で独占の実態を明らかにする必要がある」というのが趣旨だが、欧州委員会がグーグルに対し3年連続で独禁法違反による制裁金を科していることや、日本でも今年5月に巨大IT企業による取引の透明性向上を促す法律が成立していることから、「規制強化に向けた国際社会の協力も求められる」として、産経と同様の「国際協力で規制強化を」(小見出し)求めた。

 読売はほぼ本紙と同様で、裁判で「実態を解明し、公正な競争の確保につなげてもらいたい」としたが、規制に関しては「政府は訴訟の行方を注視し、規制の国際協調も模索したい」にとどまった。

◆朝日は規制に触れず

 日経は、「野放図な拡大をけん制するためにも、ここでの当局による介入は妥当」としたが、規制には言及しなかった。求めたのは、「デジタル経済の中核サービスで健全な競争が阻害されれば、産業全体の技術革新が滞る恐れがある」として、グーグルに対し「実態を公表し、不正があれば正すべきだ」である。提訴に反論し争うグーグルに、そうした対応が望めるのか疑問なしとしない。

 朝日も規制には一切触れず、東京などが懸念する問題点にも、「ネット時代の競争のあり方を左右しかねないだけに」との理由から、「実態の徹底的な解明」と「広く深い視野での検討」を求め、つとめて冷静である。

(床井明男)