赤旗の学術会議人事スクープの尻馬に乗り、騒ぎ立てる左派紙と野党

◆6人とも皆「活動家」

 「日本学術会議」が臨時国会の火種になりそうだ。同会議の新会員が1日発表されたが、菅義偉首相は同会議が推薦した候補105人のうち6人の任命を見送った。いずれも安倍政権が取り組んだ安保法制や改正組織犯罪処罰法などに反対していた学者で、野党や左派メディアは一斉に「学問の自由の侵害」と猛反発している。

 朝日と毎日、東京は2日付朝刊の1面や社会面で大きく報じ、3日付社説では「学問の自由 脅かす暴挙」(朝日)「看過できない政治介入だ」(毎日)「任命拒否の撤回求める」(東京)と息巻いた。一方、読売は第3社会面、産経は中面でいずれも2段見出しの小さな扱い(2日付)。読売は社説を出さず(4日現在)、産経は学問の自由の侵害に当たらないとし「人事を機に抜本改革せよ」(3日付)と主張している。

 学術会議は内閣府所管の特別機関で、会員の任命権者は首相だ。人事を通じて監督権を行使するのは当然だ。そもそも学術会議の会員にならなくても学問は自由に研究できる。暴挙や介入は左派紙お得意のレッテル貼りだ。

 何とも奇怪なのは任命見送りをスクープしたのが一般紙でなく共産党機関紙「しんぶん赤旗」(1日付)だったことだ。各紙は同会議が見送りを公表した翌日の2日付で赤旗より丸1日遅い。

 出し抜いた赤旗によれば、同会議から新会員として推薦されていた立命館大学の松宮孝明教授に9月29日夕方に事務局長から「(首相の)任命名簿に名前がない」と連絡があったとしている。どうやら垂れ込んだのは松宮氏のようだ。朝日などに知らせていたか不明だが、少なくとも共産党にはいち早く通報したわけだ。

 松宮氏は2017年に国会の参考人質疑で改正組織犯罪処罰法について「戦後最悪の治安立法」などと赤旗張りの主張をしていたから、共産党と気脈を通じていても何ら不思議でない。他の5人も安保法制に反対する会の呼び掛け人(宇野重規・東大教授)や、その反対署名を集めたり(小沢隆一・東京慈恵会医科大学教授)、辺野古反対声明を出したり(岡田正則・早稲田大学教授)、なかなかの「活動家」だ。

◆「日科」使い浸透工作

 いったい何を基準に同会議は会員に推薦したのか、菅首相の任命拒否よりも推薦過程の方がよほどか怪しい。それで思い出すのは共産党が長年にわたって「学術会議浸透工作」を手掛けてきたことだ。担ったのは「日本科学者会議」(日科)という組織だ。旧ソ連の工作機関とされた「世界科学者連盟」と連携する団体で、1965年の創立発起人総会には共産党の野坂参三議長(当時)が来賓として出席し、「全面的支援」を表明している(『アカハタ』同年12月5日付)。

 日科は第2回全国大会(67年)で日本学術会議への浸透方針を決めた。当時、会員は選挙制で第8期会員選挙(68年)では60人を推薦し47人を当選させ、第9期選挙(71年)では75人を推薦し57人を当選させた。その結果、学術会議会員に占める日科(共産党系)の推薦者比率は27・1%に及んだ(思想運動研究所編『左翼100集団』)。

◆共産党系の影響力大

 今はどれほどの浸透率となっているのか、各紙そろって全く触れないので実態はよく分からない。だが、ネットで日科のホームページを見ると一目瞭然、任命拒否された6氏の主張とほぼ同じ内容の声明が発せられている。

 2016年7月には安倍政権が取り組む「安全保障技術研究推進制度」に反対する申し入れを行い、学術会議に圧力をかけた。同会議の「安全保障と学術に関する検討委員会」は17年3月に日科の筋書き通りに同制度への懸念を表明しており、共産党系の影響力の強さを見せ付けた。

 それで赤旗がスクープし、その尻馬に乗って左派紙が騒ぎ立てた。これは桜を見る会と同じパターンだ。いやはや野党もメディアも共産党の手のひらで踊らされるとは―。

(増 記代司)