国民を「うつ」に追いやるコロナ禍の状況改善を菅首相に求めた新潮

◆ストレスで自殺急増

 芸能人の自死が相次いだ。コロナ禍で仕事(収入)が減る、人と会わない、孤立化など、さまざまなストレスを抱え、それらが積もり積もって極端な選択をした、と分析されている。一般人とて同様だ。自分は大丈夫と思っていても、知らないうちに内側にストレスを溜(た)め込んで、自分で処理できない段階に近づいても、気付かない人が多いのではないだろうか。

 週刊新潮(10月8日号)が「竹内結子と三浦春馬」の特集を載せており、これに関連記事「自殺急増『コロナ鬱』の早期発見法と防ぎ方」が続いていて、ページを繰(めく)る手が止まった。

 実際、この時期、自殺は増えているのだろうか。同誌が厚労省と警察庁の速報から引用した数字を見ると、「8月の自殺者数は1849人で、前年同月比で246人増えた」という。

 これだけでも深刻な数字だが、失業者数を見ると失業の“質の違い”が見えてくる。「人事ジャーナリストの溝上憲文氏」によれば、「失業率は2・6%と、前月比0・1%の上昇にとどまりましたが、にもかかわらず、就業者数は3月の6700万人からから6628万人へと、70万人以上も減りました」という。

 このからくりは「失業率は“15歳以上の労働人口のうち、働く意欲のある人”を母数に“働く意欲はあるのに職を失ってしまった人”を測る指数」で、それより数字が多く出るのは、これに加えて「“働く意欲がない人”が増えてしまったことを意味」しているというわけだ。

 こうした状況で自殺が増えてきており、同誌は「日常が保たれていれば、なかったであろう痛ましい相談の数々」が自殺防止のNPOなどに寄せられていると紹介する。

◆食べ運動し話し笑う

 ならば、その「うつ」を回避するにはどうしたらいいか。皮肉にも現在の「新しい生活様式」の正反対のことをすればいい。うつ病の発病要因にセロトニン(脳内で働く神経伝達物質でいわゆる「幸せホルモン」)の不足がある。これを分泌させるには「肉を食べ、外に出て運動し、人と話してリラックスすることが大事」なのだが、新生活様式は「真逆のことを推奨している」というわけだ。とはいえ「幸せホルモン」セロトニンを分泌させるよう、食べて運動し話し笑う生活を心掛けようという話は有益だ。

 結論として、「一人を強いて追い詰める状況を一刻も早く改善することは、菅新総理に強く求めたい」と同誌は強調している。9月24日号でも「新型コロナウイルスに対する意識のあり方を、社会全体として変えていく必要」があるとし、「一刻も早く、(新型コロナウイルスを)二類以上から(季節性インフルエンザ並みの)五類相当に下げることを望む」と求めていた。この主張は同誌に一貫している。

 新しい生活様式、3密を避ける、と言いながら、東京を解禁してGo To キャンペーンに拍車を掛け、Go To イートまで繰り広げる。ブレーキを踏みながらアクセルを吹かす。そろそろ矛盾した政策を整理して、新型コロナを「五類相当」に引き下げる決断はできないのだろうか。

◆光を見させる特集を

 週刊SPAの別冊(9月16日発売)が「コロナに負けない生き方」を特集している。いったいどう「負けないのか」と手に取るが、内容は「絶望、破綻、崩壊、失業、倒産、廃業、離婚…」などの言葉が入った見出しばかりが並び、内容もコロナで悲惨な状況になった実情を紹介するもの。「負けない生き方」に関する記事はせいぜい1、2割程度。これでは“セロトニンの分泌”は期待できそうもない。

 実情・現状はもういいから、「新常態の生き方を模索せよ!」という表紙の言葉通りの特集を作ってもらいたものだ。それもこれも経済活動を「新常識」に沿って回復させ、元に近づけていけば、大半の問題は解決する。「深すぎる闇」よりも遠くても光を見させる特集を期待したい。

(岩崎 哲)