根拠薄い朝鮮人犠牲者数を使って小池都知事をヘイト扱いした朝日
◆訂正・おわび記事掲載
関東大震災での朝鮮人犠牲者追悼式については本欄14日付で書いたばかりだが、朝日は21日付で再度取り上げ、その記事をめぐって26日付に訂正・おわび記事を載せた。それでいささか食傷気味だが、見過ごせなくなった。
21日付記事はオピニオン面の半ページを割いた特大の記者解説で、「社会部 西村奈緒美/編集委員 北野隆一」の署名と顔写真入りだ。「朝鮮人虐殺 歴史直視を/小池知事の対応 ヘイト支える恐れ」の見出しで、1日の朝鮮人犠牲者追悼式とその反対集会を扱い、追悼文を送らない小池百合子都知事を「負の歴史にふたをする動きの後押し」と痛罵を浴びせている。2日付で既報の内容で、手を替え品を替えての小池批判だ。
その訂正・おわびは26日付の社会面下段に載った。他の記事の訂正・おわびも24日付(2本)、25日付にあるから先週は計4本、連日のおわびだった。もとより「過ちを改めざる、これを過ちという」と論語にあるから、訂正自体は是とする。問題はその中身だ。
朝日によると、21日付記事に付く表で「震災全犠牲者のうち朝鮮人犠牲者数の推定」が1~数%とあるのは「震災による死者のうち殺傷事件による犠牲者数の推定」の誤りで、中央防災会議報告書の内容の確認が不十分だったとしている。つまり震災に伴う「殺傷事件の犠牲者数」は日本人や中国人も含むが、それを全て「朝鮮人犠牲者数」としていたのだ。
◆六千余名は反日宣伝
あれっ? である。これまで朝日や毎日は防災会議の犠牲者数を「朝鮮人犠牲者数」として再三、報じてきた。小池知事が追悼文をやめた理由の一つは(明言していないが)、同公園の朝鮮人犠牲者追悼碑に「あやまった策動と流言蜚語(ひご)のため六千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われた」とあり、2017年3月の都議会で六千余名の「根拠が希薄」と指摘されたからだ。これに対して朝毎は防災会議の犠牲者数を使って小池氏を攻撃してきた。
例えば、毎日2017年8月31日付社説は「歴史の修正と見られぬか」と噛(か)みつき、追悼碑の「六千余名」は震災直後に朝鮮人調査団が調べた数字が根拠で、中央防災会議の報告書は虐殺人数を震災死者数10万5000人の「1~数%」と推計しているとし、小池知事の追悼文見送りを批判した。これも「殺傷事件の犠牲者数」が「朝鮮人犠牲者数」にすり換えられていた。
むろん右派団体を含め誰も「虐殺がなかった」とは言っていない。六千余名を「南京大虐殺30万人」同様の反日宣伝と疑っているのだ。いったいこの数字の根拠は何なのか。朝日21日付の表には「在日朝鮮人や朝鮮人留学生の調査」として「2600人~6600人」とある。毎日4日付夕刊は「震災後、朝鮮人留学生らのグループが調査した犠牲者数が、震災から約3カ月後、朝鮮独立派の『独立新聞』(1923年12月5日付)で『6661人』として掲載されたが、これも確証はない」としている。
実際、確証はない。前記の毎日社説は「朝鮮人調査団」と記すが、そんな調査団は存在しない。今年の記事では「朝鮮人留学生らのグループ」に変えている。「独立新聞」は大韓民国臨時政府の機関紙だが、臨時政府といっても数十人規模で当時、上海に拠点を置いており、日本国内での調査能力は皆無だ。
資料によれば、震災時、在日朝鮮人は約8万人で、その多くは関西圏におり、首都圏は1万数千人。朝鮮人留学生は東京に約3000人。仮に6千人が虐殺されたとすれば、実に2~3人に1人が虐殺された勘定だ。それほどの虐殺はまったく根拠なしだ。戦前の留学生研究を行っている在京の大学があるが、留学生虐殺の記録があるなら教示してほしい(筆者は知らない)。朝毎は書かないが、朝鮮総督府の死者・行方不明者832人(虐殺数ではない)という数字が最も現実的だ。
◆わびる相手は都知事
改めて朝毎の朝鮮人犠牲者記事の胡散(うさん)くささが浮き彫りになった。追悼式は何度も本欄で指摘したが、北朝鮮由来だ。朝日がおわびすべきは、ヘイト扱いした小池都知事に対してだ。
(増 記代司)