朝日の社論が国民感覚に程遠いことを天下にさらした各紙世論調査
◆高支持率の菅新内閣
菅義偉内閣が発足した。報道機関の世論調査で支持率を見ると、日経の74%を筆頭に共同通信66%、朝日65%、毎日64%と軒並み高い。2000年以降では小泉、鳩山内閣に次ぐ高さで、夕刊フジは「“たたき上げ”首相の菅内閣、支持率爆騰!」の見出しを踊らせていた(18日付)。
日経が飛び抜けて高いのは、調査員が電話で「内閣を支持しますか、しませんか」と質問し、回答が支持か不支持か不明確だった場合には「お気持ちに近いのはどちらですか」と聞くからだそうだ(電子版18日)。つまり国民のお気持ちは圧倒的に菅内閣支持ということだろう。
それでも朝日はノーである。17日付社説は「菅『継承』内閣が発足 安倍政治の焼き直しはご免だ」と啖呵(たんか)を切った。「7年8カ月に及んだ長期政権の行き詰まりを打破し、傷ついた民主主義の土台を立て直すことができるか、前途は険しいと言うほかない」と、安倍辞任社説(8月29日付)で登場させた「傷ついた民主主義」を繰り返している。どうやら安倍政治にこのレッテルを貼り続けたいようだ。
では国民はどうか。当の朝日の世論調査(4日付)では、安倍政権の7年8カ月の実績を「評価する」が71%と圧倒的で、朝日の評価と真逆だった。評価する政策の選択では(一択)、「外交・安全保障」が30%と最も多く「経済」24%、「社会保障」14%と続いている。これも反安保の朝日の評価と大違いである。
毎日の世論調査(10日付)でも評価が最も高かったのは外交・安全保障政策で、「評価する」57%が「評価しない」27%をダブルスコアで上回った。いかに朝日の社論が国民感覚に程遠いか、天下にさらした格好だ。
◆高揚感ない合流新党
実は第1次安倍政権の退陣(07年9月)でもそうだった。当時、朝日は「国民が安倍路線を否定した」と書き立てたが、実際は違っていた。同政権の末期、年金問題や閣僚の不祥事が相次ぎ、07年7月の参院選で惨敗。そして「最悪のタイミング」(安倍氏)の突然の辞任で、保守層を含めて失望感が広がり不支持率は70%にも上った。
だが、毎日の世論調査(07年9月13日付)では「安倍首相のやったことで間違っていたと思うのは何か」との問いに「憲法改正の国民投票法制定」は7%、「教育基本法改正や教育再生」はわずか4%。安倍路線の二枚看板だった改憲と教育再生は国民から否定されていなかった。朝日の世論調査(同9月17日付)でもポスト安倍政権に改憲政策の継承を望む人は45%、反対も45%と二分しており、朝日の改憲全面否定論とは異にしていた。
そして今回の第2次安倍政権7年8カ月の高支持率である。逆に言えば、朝日的言論の支持率の低さである。政党でいえば、朝日に与(くみ)するのは合流新党の立憲民主党や共産党、社民党といったところだが、朝日の世論調査(18日付)を見ると、支持率は自民41%に対して立憲6%、これに共産党2%を合わせてもわずか8%(ちなみに社民0%)。立憲に新党の高揚感は皆目なく、むしろ7月(13%)から減っている始末だ。
◆1割にすぎぬ支持率
かつて朝日は「与党が『安倍一色』ならば、(野党は)これを逆手に『多様性』を旗印とする。そんなしたたかさがあっていい」(15年10月12日付社説)と、何が何でも野党共闘を唱えた。政策不一致を「多様性」とは呆(あき)れたモノ言いだったが、今日の朝日にはそんなしたたかさも消え失(う)せ、安倍辞任表明後の社説で野党を話題にしたのは11日付「野党合流新党 なれるか国民の選択肢」の1本きりで、寂しい限りだ(安倍・菅関連は実に20本以上)。
とまれ朝日の支持率は1割未満、大目に見ても10%台にすぎず、安倍路線の圧勝である。そろそろ朝日は赤旗を下ろして白旗を上げればどうか。それとも珍論を唱え続けるか。反安倍の焼き直しはご免被りたい。
(増 記代司)