菅新首相に最初からケンカ腰の文春、コロナの扱い引き下げを迫る新潮
◆「多額」の献金を追及
新政権発足後の100日間を「蜜月期間」といい、メディアも政権への批判や性急な評価を避ける。この“紳士協定”を反映してか、菅義偉新首相への評価も高く、矢継ぎ早に発する方針や指示が好意的に取り上げらている。
そんな中、初っ端からケンカ腰なのが週刊文春(9月24日号)である。「親密企業がGoToイート受注」の記事だ。総裁選出馬の頃から、菅氏攻撃を始めていた同誌にとって「蜜月」も何もありはしない。政治家と企業はくっついて悪さをするもの、という前提で粗(あら)探しの目で見れば、何でも怪しく見えてくる。
まず見出しの「GoToイート受注」企業だ。「オンライン飲食予約サイトで予約するとポイントが付与される」が、業者「十八社の応募のうち十三社が採択され」、その中に菅氏と親しい「ぐるなび」が入っていた、というところに同誌は引っ掛かったようだ。
ぐるなびの創業者・滝久雄会長は「菅氏が初当選を果たした一九九六年から二〇〇二年にかけて、菅氏の政治団体(略)に計二百八十万円の寄附をしている」という。政治献金は額の多寡が問題なのではなく、合法か否かが問われるべきだが、同誌は金額が気になるようだ。それに6年間に280万円、1年にしてみれば46万円程度が高額か否かは議論の分かれるところ。
また菅氏の選挙区を走る京浜急行関係者から「多額」の献金がなされていることを挙げて、横浜に計画されている「IR(統合型リゾート)」事業を当て込んだとみるが、これもIRに関連する業界・企業は数多くあり、京急だけが恩恵を受けるわけでもない。計画が決まってもいない事業と政治献金を結び付けるには無理がある。
政治家は「李下(りか)に冠を正さず」というが、ここまで問題視されると、何もするなと言われているのに等しい。菅氏は当選後の会見で、「仕事をさせてください」と言って、実務を着実に進めていきたいとの意欲を示していた。「蜜月」期間に一つ黙って仕事をさせてみてはどうだろうか、と思う。
◆国家観見えぬと注文
週刊新潮(9月24日号)も菅氏を取り上げた。同誌は「反権力」を剥(む)き出しにするようになった文春のように安倍政権を感情的に批判することはなかったが、菅氏に対しては少し違うようだ。「菅総理の裏街道」の特集で「彼の『国家観』が伝わってこない」と注文を付けている。安倍政権が「憲法改正、領土返還、拉致問題解決、外交安保」と大きなテーマを掲げていたが、国民の間には多少の“疲れ”も見えた。
菅氏が掲げる「携帯料金値下げ」「規制改革」など比較的身近な政策テーマはエスニック料理が続いた後のお茶漬け、梅干しのように、日本人の胃にやさしい、感じがする。少し疲れた体を無理なく正常に戻していくような、それでいて、今必要な処方のよう。
「コロナ禍という荒波を何とか上手く乗り切ってくれることを願うばかりだ」というのだから、やはりしばらくは静かに見守ってもいいのではないか。
◆過剰対策の弊害指摘
新政権に関する記事よりも注目なのは「コロナ過剰対策であなたの子どもは壊れていく」の特集だ。「学校に行きたくない」「人と会うのが怖い」「体調不良」「行事、部活なしで勉強だけ」で「子どもの心はどんどん不健康になっていく」現状を伝えている。
新型コロナは「感染のピーク時にも、むしろ死者数が減っていた」のであり、「多くの人が命を奪われる病気ではない」。コロナの感染者数を数えるが、それよりも多くの死者を出しているインフルエンザは数えたことがない。
新潮は「新型コロナウイルスに対する意識のあり方を、社会全体として変えていく必要がある」として、「一刻も早く、二類以上から(季節性インフルエンザ並みの)五類相当に下げることを望む」と「菅新総理」に訴えている。必要な主張である。
9月16日に閣議決定した「基本方針」ではコロナ対策をいの一番に掲げ、「感染対策と社会経済活動との両立」を謳(うた)っている。ワクチン確保ももちろん大事だが、「五類相当」への引き下げについての判断と決断を政府に迫ったのは正論だ。
(岩崎 哲)