コロナ時代にものづくりの強み発揮する企業を特集したエコノミスト

◆姿を消すコロナ特集

 世界的な感染拡大を続ける新型コロナウイルス。いまだにこれといった特効薬はできておらず、これから訪れる冬場に向けての感染拡大に不安を抱かせる。それでも、このところの経済誌を見れば新型コロナが日本上陸した当初の悲壮感は見られない。ちなみに、毎週のように新型コロナを扱った4、5、6月ごろの経済誌の特集には、「コロナ大恐慌~『塹壕戦』の長期化で未曽有の経済危機へ」(東洋経済4月25日号)「コロナ異常経済~未曽有の長期停滞時代に突入」(同誌5月23日号)「銀行VSコロナ倒産~融資先危険度ランキング」(ダイヤモンド6月13日号)「コロナデフレの恐怖~第2波はこれから」(エコノミスト6月16日号)といったおどろおどろしい見出しが並んだ。

 ところが、ここ1カ月ほどは新型コロナの特集はほとんど姿を消している。その一方で、企業業績の上昇を扱う特集が見えてきた。エコノミストの「コロナ時代の成長企業~コロナでも伸びる日本のものづくり」(9月8日号)がそれ。「世界はコロナ禍による経済活動の停滞という逆風にさらされているが、着実に売り上げと利益を上げ、成長が見込まれる日本のものづくり企業がある」として、その業種・企業を紹介している。

◆コア部分で収益確保

 その一つが、半導体製造装置の業界である。半導体IC市場では今や韓国や中国にシェアを奪われた感があるが、半導体製造装置市場においては世界シェアを握る企業が多い。というのも、半導体の製造は幾つもの工程を必要とし、各工程において高度な技術を要する装置が必要。その装置の製造に日本企業が強みを発揮している。例えば、絶縁膜エッチング装置でトップシェアを誇る東京エレクトロン、洗浄装置分野で世界トップのSCREENホールディングス、i線露光装置分野でトップシェアのキヤノンなど、日本の装置メーカーが世界市場で上位に食い込み奮闘しているというのである。また、ものづくりの屋台骨とも言える産業機械においては工作機械やファクトリーオートメーション分野などで業績を伸ばしている企業がある。

 こうした、日本のものづくり産業に関して、エコノミストは「2000年代に入って完成した(グローバルなサプライチェーンの)システムは、英国のEU(欧州連合)離脱や米中貿易摩擦など、予測不能のリスク(不確実性)の影響をより強く受けるようになり、今回の新型コロナウイルスのような世界的パンデミックは、グローバリズムの象徴とも言えるグローバル・サプライチェーンの脆弱性を明確にした。不確実性時代の中で打開策はあるのか、日本ものづくりの方向性が問われている」として岐路に立つ日本のものづくりに警鐘を鳴らす。

 その一方で、同誌では「ものづくりでは、例えば、半導体をつくる時に不可欠な部材のようなコアの部分を抑えることが大事。そこを今回の新型コロナで各企業は再認識したと思う。…単純な国際競争に委ねるのではなく、そうしたコアの部分で収益を上げていく企業群を育てていくことも重要だ」(経済産業省・菊川人吾課長)といったコメントを挙げ、日本の強みを確保していく戦略づくりを訴える。

◆国内への生産回帰も

 こうした主張に関しては、特集ではないが、東洋経済(9月5日号)で大阪大学大学院経済学研究科の延岡健太郎教授が、不確実性時代のカントリーリスクを低減させる方法として、日本企業の「国内生産回帰」を挙げる。「(新興国との製造コストの差や不確実性の要因の増大など)新しい経営環境に合わせて国内生産を増やそうとしている今こそ、日本のものづくりでしかできない価値創出にもう一度真剣に取り組む必要がある」と語り、日本がかつて有していた匠(たくみ)の技にあるような高度な技術と感性をものづくりに取り入れ世界に発信することを強調する。

 新型コロナ騒動は世界経済を停滞させているが、戦略の練り直しを迫られる企業も多いと聞く。ものづくり大国と言われた日本だが、もう一段高いレベルに這(は)い上がる機会なのであろう。(湯朝 肇)