戦後最悪GDPでも政府批判なしの朝日、暴言・妄言繰り返す東京
◆目立った建設的提言
大方の予想通り、2020年4~6月期の実質GDP(国内総生産)は年率27・8%減と、戦後最悪の落ち込みを示す厳しい数字になった。
各紙も歴史的事象に翌18日付でそろって社説を掲載した。見出しは次の通りである。
読売「不安軽減で消費底上げ目指せ」、朝日「秋冬の感染増に備えを」、毎日「場当たりでは回復見えぬ」、産経「危機対策の立て直し急げ」、日経「景気底打ちへ険しい道を進むほかない」、東京「対策の見直しが急務だ」、本紙「焦らず地道に経済再生図れ」――
見出しの通り、かつてない苦境の中、建設的な提言が目立った。特に保守系紙の読売や日経だけでなく、意外にも、朝日にも政府への批判の声はなく、それだけ、今回の感染症対策から人為的に経済活動を停止させたことによる苦境の大きさと政策対応の難しさを改めて実感させた。
日経は「長期化する新型コロナウイルスの感染拡大への対応が問われるのはここから先だ」として、感染者数が再び増えている現状を踏まえ、「最悪期を乗り切り、景気底打ちを確実にする官民一体の周到な努力が必要」と強調。
また、経済活動と感染防止を両立する「険しい道が待っている」が、コロナがもたらした新常態に企業はデジタル化の推進などむしろ前向きに対応し、国民一人ひとりの意識改革をきちんと支える政府・自治体の緻密な連携と対策が必須である、とした。
同感である。読売も感染症との闘いは長期化も予想されるとして、「状況に応じ、追加の経済対策をためらうべきではない」「次の成長に向けた政府の施策が不可欠」とした。
朝日は、「感染拡大抑制と中長期的な経済回復を両立する手法の精度を上げる必要がある」と指摘し、感染の広がりが見られた場合は、できるだけ先手を打ち、地域や業種など対象を限定した休業促進策を工夫するといった手法を洗練させるべきだ、などとした。妥当な提言である。
◆方向性に問題はなし
そんな中、独善さが際立ったのが、東京である。同紙は冒頭の段落で、「緊急事態」として実施した対策は功を奏しておらず抜本的見直しが急務だ、と断じたが、対策の実施がなければ、欧米並み、あるいはそれ以上の悪い数字になっていたであろう。あきれた暴言である。
同紙はまた、「指摘せねばならないのは、政府の対策が現実とずれているという点だ」として、「Go To トラベル」など例に挙げて政府批判を繰り返した。
しかし、その「Go To トラベル」は、困窮する地方の観光事業者など実施を待ちわびる人たちが少なからずいて、その要望を受けて、政府は当初の8月上旬から7月下旬に実施を早めたわけである。これを単に「ずれ」の一言で批判できるのか。
そして、同紙が見出しにも取った文末の「政府はタイミングを外した取り組みをいったん停止し、最も効果的な予算配分に向け対策を練り直すべきだ」である。
政府の対策には、確かに、手続きの煩雑さからスピード感に欠けた点、業務委託でのコストの高さ・不明瞭さなど問題も少なくなかったが、方向性に問題はなかった。
それなのに、東京が主張するようなことを実施すれば、支援はさらに遅れることになり、同紙が懸念する「立場の弱い」人たちの困窮の度合いがさらに増すだけであろう。妄言の類(たぐい)である。
東京と似たような批判を展開したのが毎日で、見出しに示した安倍政権への「場当たり」批判である。
◆避けられぬ試行錯誤
確かに政府には、毅然(きぜん)とした筋の通った政策対応を望みたいが、今は未曽有の感染症との闘いの中であり、試行錯誤は避けられまい。専門家でも種々の意見があり、対処の仕方で見解が分かれることも少なくない。さらに今は、経済の専門家も加わっての難しく「険しい道」(日経)を選択しなくてはならないわけである。批判は簡単だが、責任ある真摯(しんし)な姿勢と言えるのか。
(床井明男)