グローバル化時代に英語習得の必然性を指摘したダイヤモンドなど
◆東京五輪開催で拍車
日本人にとって英語学習は極めて難しい作業であることは間違いない。戦後、日本では中学生(現在は小学5年生)から英語を学び、高校・大学とおよそ教育機関で10年以上も勉強する。しかしながら、それだけ勉強しても日常レベルの英会話がスムーズにいかないのは”おかしい”と感じている。
そこで文部科学省は最近、抜本的な政策を打ち出した。グローバル化に対応した英語教育の体制整備を進めることが趣旨だが、折しも2020年には東京五輪が開かれる。訪日外国人観光客誘致を進める日本政府としても国民の英語力アップは必須の課題。実践的英語教育はさらに拍車がかかるだろう。
同省の掲げた政策を挙げれば、例えば、現在小学校高学年(5、6年生)に行われている英語授業を中学年(3、4年生)に引き下げがある。また、中学校での日本語を使わない英語授業の実践や英語検定試験、TOEFL(トーフル)など外部団体の資格試験を積極的に活用することなどが謳(うた)われている。
もっとも、文科省の方針に対して「英語に力を入れるよりは、もっと日本語教育に力を注ぐべきだ」との声もあるが、グローバル化する時代の中で英語が事実上国際公用語となっている現実をみれば、国際会議、ビジネスにおいても英語習得は不可欠であり、学校教育での英語授業の充実化は不可避と言わざるを得ない。
こうした中で経済誌の2誌が英語をテーマに特集を組んだ。週刊エコノミスト(1月14日号)の「英語と経済」、週刊ダイヤモンド(1月11日号)の「英語勉強法」である。2誌とも英語の習得は大事としている点では同じだが、特集の内容は全く違う。エコノミストは「英語」が世界の覇権言語になった歴史に焦点を当てたのに対し、ダイヤモンドは「英語を如何に効率的に早く習得するか」という上達・活用術を紹介。エコノミストの企画がアカデミックで学術的な雰囲気が漂うのに対し、ダイヤモンドは「ハウツーもの」的な色彩が強い。
◆企業が英語力を強化
今や世界の金融市場で使われている言語は英語。国際的な科学専門誌の使用言語も英語が圧倒的。世界の航空管制で使われている言語もまた英語である。それらだけ見ても英語は世界の覇権言語となっており、アングロ・サクソン諸国の優位性は当分の間揺るがないとされる。エコノミストは、「もはや(ビジネスの世界で)英語が使えるかどうかで人が評価される。英語嫌いでは日本は生きていけない」(井上史雄・東京外語大学名誉教授)と結論づける。
一方、ここ数年、日本の企業の中で社員の英語力を強化する動きが高まりを見せている中で、ダイヤモンドは楽天やサントリー、双日、住友商事などの全社的な取り組み事例を挙げた。なかでも楽天は役員以下、社員それぞれに対してTOEIC(トーイック)で700点から800点以上の獲得を義務付けた。その狙いは、①世界を股にかけるグループ企業の情報共有②さらなる海外展開に向けた国内人材のグローバル化③優秀な人材を確保する――ことにあるという。世界を相手にビジネスを行おうとすれば英語の習得は必須であり、当然新入社員の採用の際にも重要項目となる。
また、英語勉強法としてダイヤモンドではTOEFL、TOEICの勉強法などを初級、中級、上級者向けに紹介しているが、米国や英国だけでなくフィリピンの留学を奨めている。「フィリピン人は英語を教える高度なスキルをもっている上に費用が安い」からという。とにかく、英語習得には日本の教育現場で教えるような受験英語ではなく、英語で考え、英語で話す体質を身に付けることらしい。
◆文法優先の学校英語
ところで米国のコロンビア大学に留学し、後に数年間米国で生活した知人のN氏が語っていることだが、彼は当時、「英語を使いこなせなければ、社会の一員としてみなされない」という気持ちで自分を追い詰めて勉強したという。そこで得た結論は、「英語で何度も何度も練習すること。英語で学び、ある程度英語を使いこなせるようになってから、より正しい英語の使い方、つまり英文法を学ぶことが必要だ」と力説していた。
ダイヤモンドの紹介する英語勉強法もN氏の英語習得法もまず、英語に慣れること、そこから文法に入ると指摘する。これらの事例と現在、学校教育での英語教育と大きな違いがあることは明らかだ。
(湯朝 肇)