小池都知事の政界遊泳術の巧みさをあげつらうも中身の検証ない新潮
◆任期途中で鞍替えも
これを「第2波」とは呼ばないのか。新型コロナウイルス感染が広がっている。その中心は東京から、もはや地方都市にまで広がり、特定の年齢層に限った話ではなくなった。観光などを促す「Go To キャンペーン」をめぐって政府、自治体、業界、これにメディアまでが加わって喧々囂々(けんけんごうごう)やり合っているが、どれが「解」なのかは分からない。
そんな騒動をも自らの肥やしにしてしまう人物がいる。小池百合子東京都知事だ。週刊新潮(7月30日号)が「五輪諦念で『小池知事』妄想の『女性宰相』」の記事を載せた。「なにもせずとも、やっているように見せる天才が小池都知事である」と書き出し、「行動には一貫性のかけらもないが、状況に応じて自分を輝かせる手腕や瞬発力は並大抵ではない」とバッサリだ。
本来ならいまごろは五輪開催都市の長として世界中からのゲストをもてなし、政治キャリアを太らせながら、次の目標を練っていたところだろうが、コロナ事態で五輪は延期、しかも感染拡大が止まらず、Go To キャンペーンからも東京は外されて、首長として窮地に立たされるところだ。
しかし、小池氏は連日、感染者数を発表しながら、相変わらず電波ジャックを続けている。コロナ感染“震源地”の一つである「接待を伴う飲食業」がお膝元にありながら、有効な手立ても講じることができない。なのにGo To キャンペーン外しが発表される前には感染者数の増加をメディアの前でアピールして、「キャンペーン潰し」ともとれるパフォーマンスをする。確かに「やっているように見せ」「自分を輝かせる」行動は「機を見るに敏」ではある。
7月の都知事選で再選された時の記者会見で印象的なシーンがあった。「任期を全うするのか」の質問が繰り返し出されたのだが、小池氏は明確に答えなかった。つまり任期途中で鞍(くら)替えもあり得るということだ。
「中央大学名誉教授の佐々木信夫氏」は同誌に「国政で二階派には総理候補がいない。少し深読みですが、小池さんを後継にして総理候補に、というシナリオがあるかも」と語っている。二階俊博自民党幹事長とは保守党や、自民党復党などで関係が深い。見出しの「女性宰相」の“深読み”もこの辺りから出てくるのだろう。
かつて「風見鶏」と言われながら、周到な準備と確固としたビジョンを持って首相の座を射止め、1800日を超える歴代7位の在職記録を作った中曽根康弘氏の例もある。小池氏の政界遊泳術の巧みさをあげつらうこともいいが、本当に中身がないのか、その辺を検証する企画があってもいいではないか。読者として判断材料が欲しい。
◆警告するが解答なし
同誌に「日本は北朝鮮『核ミサイル』の射程内!」の記事がある。防衛白書を基にしたものだ。ミサイル迎撃システムである「イージス・アショア」の配備を政府は事実上断念したが、性能を上げた北のミサイルを迎撃できないからだった。だが、北のミサイルは日本を射程内に収めたという。
同誌は「恐るべき事実」と驚いてみせ、「わが国の生殺与奪を“36歳の将軍様”に握られていることの恐ろしさを、ゆめゆめ忘れてはならない」と警告する。ならば、どうしたらいいのか、防衛白書は何と言っているのかを記事は触れるべきなのに、これがない。
唯一、トランプ米大統領の首席戦略官だったスティーブン・バノン氏の「北朝鮮問題に『軍事的解決はない』」との発言を紹介し、「タカ派の活動家として知られるバノン氏ですら、北朝鮮の“報復能力”の高さを極めて深刻に捉えていることが窺える」とするだけだ。黙って撃たれるか、外交で妥協しろとでもいうのか、これでは記事の意味が分からない。
◆上から目線のNW誌
「コロナで変わる日本的経営」の記事をニューズウィーク日本版(7月28日号)が特集している。「克服すべき7つの課題」を挙げており、要するに「本当の意味でのグローバルスタンダード」に合わせよ、という、いつもの“やや上から”目線の教示である。聞くべきものはあるにはあるが。
(岩崎 哲)