2週連続でコロナ禍による大型倒産、デフレ、不況の危機を煽る2誌

◆製造業にも不況の波

 戦後、日本において体験したことのない感染症のパンデミック(世界的流行)に日本経済の回復軌道は見えず、むしろ不安と動揺の渦が巻く。政府は5月下旬に緊急事態宣言を解除したものの、新型コロナは収まるどころか第2、3波の気配さえ見せ、マスコミは連日コロナに関わる話題を取り上げる。経済活動は徐々に動き始めてきたものの観光、ホテル、飲食業などサービス産業への影響は大きく、中小零細企業は倒産の憂き目に遭う一方で、製造業にも不況の波が押し寄せる。

 確かに、このところの経済誌を見ると「デフレ」「不況」「倒産」の文字が乱舞し、いかにも日本経済が沈没していくかのような印象を与えている。例えば6月20号の週刊ダイヤモンドには「コロナ倒産連鎖 衣・食・泊 存亡ランキング」との見出しで外食産業やアパレル、観光、百貨店業界を分析。記事中には「コロナ大倒産時代」とまで銘打って企業のランキング付けを図る。ちなみに同誌は前週の13日号でも「銀行VSコロナ倒産 融資先危険度ランキング」と題して企画を組んでおり2週にわたって倒産特集を打ち上げた。

 また、週刊エコノミストを見ると23日号で「地銀の悲鳴」との見出しで地銀の苦境ぶりを描く。それでなくとも近年の地銀はマイナス金利などの影響もあって苦戦を強いられる中、今回のコロナショックでダブルパンチを受けている。もっとも、同誌も前週号では「コロナデフレの恐怖 第2波はこれから」とこちらも2週続けて悲壮感を漂わす。ある意味、扇情的という印象さえ受ける。

◆衣・食・泊の業界打撃

 ただ、こうした中で、週刊東洋経済はというと、13日号で「コロナ経済入門」と題して今回のコロナ騒動を客観的に見詰めようとする。「緊急事態宣言の発令から解除までの約2カ月間、…私たちは2つのことを考え続けてきたのではないだろうか。このコロナ禍はいつ、どのような形で終息するのか。そして、この事態が過ぎ去った後に生まれるのはどのような世界なのか」と疑問を投げ掛け、「5年後、10年後の遠い先よりも、もっと近い半年後、1年後、2年後について占う方が難しいのだが、今、多くの人が知りたいのは、こうした近未来のことだろう」と前置きして現在、世界で起きている事象、例えばGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの巨大IT企業の動向、世界的な食料需給、米中の覇権争いなどといった視点から捉えている。

 もちろん、ダイヤモンドの特集にも客観的な分析がないわけではない。同誌(20日号)は帝国データバンクの資料を基に「今回のコロナ倒産(8日時点で227件)で最も多い業種はホテル・旅館の40件、次いで飲食店の30件、アパレルの17件、食品製造の15件と続き、飲食店を除けば、これまでの“常連(建設業、飲食店、運輸業)”とは別の顔触れが上位に来ている」と説明、「『衣・食・泊』の業界にコロナ倒産の嵐が吹き荒れている」と断言する。全国にホテル・旅館などの宿泊施設数は5万を超える。そうした中で「業界に倒産の嵐が吹き荒れている」とは言い過ぎという印象を受ける。

◆持久戦になる覚悟を

 一方、東洋経済(13日号)では「明日にでもワクチンや特効薬が開発され、ウイルスに打ち勝ち祝祭的な解放感に包まれるような未来が来たりしないのは、新型コロナに類似したSARSやMERSに対するワクチン・特効薬が未だにないことからも明らかである。私たちはウイルスとの“共存”を目指して、長い持久戦を戦うしかない」(福岡伸一・青山学院大学教授)と述べているように、この国難に対して、いま一度冷静になりグローバルな視点を持ちながらしっかりと目を見開いて世界と対峙(たいじ)していかなければならないことを教えている。扇情的なマスコミの言動に揺れ動いてはいけないのである。

(湯朝 肇)