「退陣勧告」受ける安倍氏、「学歴詐称」に決着の小池氏を報じたポスト
◆崖っぷちの安倍首相
新型コロナウイルス感染症対策をめぐり、安倍首相は叩(たた)かれっぱなしである。感染者数・死亡者数は欧米各国から比べても桁違いに低く、海外メディアからは「奇妙な成功」とやや斜めであれ、一応の評価を受けている。「空前絶後の規模、世界最大の対策」を盛り込んだ補正予算も組んだ。しかし、国内では全く評判が良くない。
週刊ポスト(6月26日号)は「反響囂々(ごうごう)『さよなら安倍総理』第2弾」を載せた。とにかく「言葉は常に空虚で国民には響かない」「役人の作文を棒読みする」「口から出る中身のない虚ろな言葉を『嘘』という」と散々な言われようなのだ。
安倍首相はコロナ関連で8回の会見を行ったが、役人の作文を読むだけ、という批判は否定し難い印象もある。もちろん内容を把握した上でのことだろうが、聞く側が納得しない原因の半分は発言側の説得力のなさ、信用のなさである。
10万円給付がまだ全国平均で4割にも至っていない。執行の現場である自治体の事務と申請の不備が隘路(あいろ)になっており、官邸の責任ではないのだが、「必要な時に給付されない」という批判は政府に向かう。持続化給付金も同じような状況だ。
安倍首相の言葉が「空虚」に聞こえるのは、もっぱら政策を立て執行する官僚が現場の状況に即した対策を立案できていないことに原因がある。それは「官僚任せ」の批判を生むし、そもそも、政治家の力量不足が招いたもので、これらが全て安倍首相に向けられているのが現状だ。「さようなら安倍総理」という特集は、安倍首相が崖っぷちだというのと同時に、今が安倍首相の踏ん張りどころでもあることもよく表している。
◆顔写真入りの証明書
小池百合子東京都知事が再選に向け出馬表明をして、実質的に知事選がスタートした。小池氏といえば、国の緊急事態宣言とは別に、解除後も自粛を求める「東京アラート」を発令して“メディアジャック”を続けた。それもこれも知事選に向けたパフォーマンスと揶揄(やゆ)された。
週刊新潮(6月18日号)は「女城主の『履歴書・請求書』」「小池知事『カネと男』の勲章」など、小池氏のイメージを下げるような記事を載せたものの、どれも小池氏の票を大幅に減らすほどの効果はなさそうだ。
むしろ、ここ1、2週間は「学歴詐称」が注目されていた。選挙のたびに出てきてはうやむやに終わる話題だ。これに終止符を打ったのが、ポスト誌だ。「顔写真入りの卒業証明書」の画像を同誌は持っていたという。「小池氏は若手議員時代に本誌(ポスト)に『ミニスカートの国会報告』を連載しており、その誌面で公開したものだ」。同誌は小池事務所の確認を取って載せている。呆気(あっけ)ない決着だ。味のなくなったガムを吐き捨てるようで、この程度のことなのに「スクープ入手」の見出しが失笑を誘う。
◆マスクは臨機応変に
「第2波」に構えつつも、そろりそろりと経済・社会活動が開始されている。週刊現代(6月13・20日号)が「全国民必読」と銘打って「いまコロナウイルスはどこにいるのか」を載せた。
「いま、最も知るべきは、新型コロナウイルスがどこにいるのかということだ。不自由な自粛生活に戻らず、日々の生活を続けるために、一番役に立つ情報をお届けしよう」ということで、トイレ、ペット、マスク、紙幣はじめ手に取るもの、複数の人が利用する施設、等々、細かく“指南”している。
ずっと気になっていたのは「マスクは必要」なのかだ。「山形大学医学部教授の森兼啓太氏」は「必要ない」と同誌に断言した。「人とすれ違う程度では感染しません。くしゃみを目の前で吹き付けられるようなことがなければ問題ありません」と。だから「3密ではマスクを着用する,それ以外のところでは外すと臨機応変に対応しよう」と同誌は結論付ける。杓子(しゃくし)定規では本人も周りもくたびれる。臨機応変がいいのだと。わが意を得たりだ。
(岩崎 哲)