「コロナ危機対応に万全を」と追加緩和の日銀を鼓舞した日経、産経

◆本格的危機を回避へ

 日銀は27日、新型コロナウイルスの感染拡大による経済的打撃に対し、2カ月連続となる異例の金融緩和策を決めた。「非常に危機的な状況でリーマン・ショックを上回るようなネガティブな影響が出る恐れがある」と、黒田東彦総裁は会見で強い懸念を表明。年間80兆円をめどとしている国債購入の上限を撤廃するなど、政府と協調して政策を総動員するという。

 翌28日付の新聞社説は、日経、産経がコロナ危機対応に万全を尽くせと日銀の対応を評価、鼓舞する論調を掲載。これに対して、毎日は国債購入の上限撤廃に「歯止めなき政策の危うさ」と正反対の論調を展開した。

 日経は今回の金融緩和の強化を「企業の資金繰りや市場の安定を促す対策で、金融政策の軸足は物価安定から危機対応に移った」と解説。

 日銀が購入する社債やコマーシャルペーパー(CP)の上限を従来の3倍近い20兆円としたことや、金融機関にゼロ金利で資金を供給する「特別オペ」の拡充など資金繰り支援策を拡充したことに、日経は「企業の大量倒産で金融システムが揺らぐような事態を防ぐには思い切った対策が必要で、支援の拡充を歓迎したい」と評価した。

 「目先の切迫した課題は経済・金融の本格的な危機の回避」というのが同紙の認識で、さすが経済紙である。

◆長期戦へ万全の対策

 同様の論調を示したのは産経で、「経済活動の自粛などで景気悪化は日増しに深刻化しており、感染収束も見通せない」として、「長期戦を念頭に置いて万全の対策を講じるべきだ」と訴えた。

 産経は日銀の国債購入の上限撤廃について、「国債増発による政府の財政出動で金利が上昇する懸念があるためだ。政府が追加歳出を重ねれば、国債はさらに増発されよう」と指摘し、これに備えるものだとした。

 「国の借金を日銀が無制限に賄える手法は財政ファイナンスの色彩が濃く、本来、あるべき姿ではない」としながらも、「それでも積極的な姿勢を示さなくてはならないほど景気の先行きは深刻だとみるべきである」というわけで、同感である。

 同紙は、日銀が社債購入などを増やせば倒産で損失を被るリスクも増えるが、「まずは企業を全力で支えて、雇用を守ることを優先すべきだ」としたが、その通りである。

 これに対して、毎日は「非常時」と認めつつも、「危うさがつきまとう」と懸念を表明。米連邦準備制度理事会(FRB)が先月、米政府の打ち出した2兆㌦超の経済政策の財源手当て支援のため、米国債を無制限に買う緊急措置を決めたが、「すでに国債発行残高の約4割を抱える日銀とは事情が異なる」とした。

 黒田総裁は会見で、政府から直接、国債を引き受けておらず「財政ファイナンスではない」と強調したが、同紙は「日銀頼みの財政運営が行き過ぎれば、実態は禁じ手(財政ファイナンスのこと)に近づく」と指摘。政府は追加対策で真に国民の支援に効果があるものを精査すべきだと強調した。

 政策を絞って国債発行の増発を抑えよ、ということなのだが、感染収束が見通せず一段の支援策が求められるような状況の中で、同紙の主張は現実的な対応と言えるのか。

 ちなみに、日経の見方は「大規模な財政出動に伴う国債消化への不安を和らげる意図も透ける」である。

◆金融機関に準備促す

 読売は日経、産経と同様、企業の資金繰り支援策を強化したことを「適切な措置」と評価したが、社説の内容は「肝心なのは、今回の対策を生かし、民間金融機関が企業向け融資を拡大させること」として、特に中小・零細企業へ一刻も早く必要な運転資金が行き渡るよう、金融機関に準備や工夫を促した。

 東京は大社説だったが、抽象論に終始。朝日は29日付で、日銀の経済危機対応を評価する一方、影響長期化への目配りを求めた。

(床井明男)