現行憲法無謬論の「護憲信者」にすぎぬ左派紙の名ばかりの立憲主義
◆立憲の支持率が急落
新型コロナ禍をめぐる安倍政権の対応はどう評価されているのか。朝日の世論調査を見ると、「評価しない」53%、「指導力を発揮していない」57%、「緊急事態宣言を出すタイミングが遅すぎた」77%と手厳しい(21日付)。それでも内閣支持率は横ばい。他紙もほぼ同じ傾向だ。
だからといって野党第1党の立憲民主党が評価されているわけではない。産経の調査では、同党の支持率は2月8・6%、3月7・7%、4月3・7%と、半減どころか約6割減の激落ちだ。これに対して日本維新の会は3・8%から5・2%へと大幅に増やし、初めて立憲を追い抜いた(14日付)。
毎日の調査でも立憲5%(3月9%)、維新6%(同4%)で、「大阪府の吉村洋文知事が新型コロナ対策で発信を強めていることが維新の支持を押し上げた可能性がある」としている(20日付)。
ちなみに吉村知事はジャンパー姿だ。産経の黒田勝弘氏は「から(韓)くに便り」(26日付)で、韓国は首相以下、全閣僚が黄色の制服ジャンパー姿で、背広の日本とは「コロナ戦争」への腹の据え方が違うと述べている。危機感の差が支持率に現れたか。
立憲の支持率下落について産経の阿比留瑠比氏は「コロナ危機が迫りくる今年1月末ごろから3月にかけ、国会でそれよりも首相主催の桜を見る会や森友学園問題の方が重要であるかのように振る舞ったためだろう」と分析している(23日付「極言御免」)。
◆危機感が乏しい朝毎
同じように振る舞ったのが朝日だが、危機感は今も乏しい。前掲の朝日調査は、新型コロナに関する質問の後に唐突に森友学園をめぐる質問をしている。この期に及んでまだ森友問題なのだ。
毎日も桜や森友にうつつを抜かした同類だ。毎日の世論調査でも「緊急事態宣言を出すタイミングが遅すぎた」が70%に上るが(20日付)、安倍首相が発令に慎重過ぎたとすれば、その一因をつくったのは毎日に他ならない。
宣言は民主党政権下の2012年5月に公布された新型インフルエンザ特措法で設けられた(今回、改正)。その際、猛反対したのが左翼人権派だ。日本弁護士連合会が同年3月、「法案は危険だ」として反対する会長声明を出すと、毎日はそれに同調し「感染防止の陰で表現の自由侵害も」(同年4月7日付メディア欄)と盛んに反対論を煽(あお)った。そんな毎日に「宣言を出すタイミングが遅すぎた」などと批判する資格はない。
朝日も毎日も立憲民主党と同様に立憲主義を唱える。朝日の「キーワード」によれば、立憲主義とは「国家権力を憲法によって規制しようという政治原則」だそうだ(19年4月5日付)。それなら緊急事態宣言は憲法条項のいかなる根拠に基づいて国民に規制を強いているのか、問い質(ただ)さねばならない。ところが、沈黙したままだ。
彼らの立憲主義とはその程度のものなのだ。立憲主義とは名ばかりで、その中身は現行憲法無謬(むびゅう)論の「護憲信者」にすぎない。奇(く)しくも新型コロナ禍はその正体を暴いた。
◆紙面での憲法論議を
世論調査で唯一、産経が次のように質問している。
≪国家的な危機や大規模災害に際して、政府が緊急的・一時的に国民に対し、強制力をもつ措置がとることができるよう憲法に「緊急事態条項」を設けることに賛成か≫
回答は賛成65・8%、反対23・4%、他10・8%で、改憲派が圧倒している。読売は阪神大震災に際して「大災害などの緊急時に首相が素早く対応できるような規定を憲法に設けるべきだ」と問うたことがある。それには90・2%が賛成した(1995年4月6日付)。今回は読売の質問にはない。新型コロナ禍の今、緊急事態条項を問わずして、いつ問うのか。
来る5月3日の憲法記念日は護憲・改憲派を問わず集会を見送るという。ならば一層、紙面で憲法論議を起こしてもらいたい。
(増 記代司)