新型コロナで揺れ動く日本経済の今後と世界秩序への影響を占う3誌

◆「大恐慌到来」も覚悟

 連日、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)による感染拡大がテレビや新聞で報道されている。従って、このところの経済誌の話題も新型コロナ絡みが中心になる。

 例えば、週刊ダイヤモンドは4月25日号で「コロナで激変!世界経済&投資術」をテーマに特集を組めば、週刊東洋経済は「コロナ大恐慌日本経済はどこまで沈むか」(同日号)の見出しを付け、さらに週刊エコノミストは「首都封鎖コロナで沈む浮かぶ企業」(28日号)と新型コロナ一色。ちなみに前週号は、エコノミストが「コロナ相場に勝つ日本株上場銘柄の見極め方」、ダイヤモンドも「コロナ危機で働き方激変」と新型コロナを取り上げている。

 猛威を振るう新型コロナが日本経済あるいは世界経済に今後どのような影響を与えていくのか。それが今回の特集における経済3誌共通の命題だ。そこで第1のポイントは、新型コロナがいつまで続くか、ということ。これについて東洋経済は、「経済の停滞は長期化が必至だ。…もし首尾よく日本国内で抑え込めたとしても、海外の影響による第2波、第3波を警戒しなければならない。そうした恐怖がある限り、経済活動を活発化させるのは難しい」と長期の経済停滞を示唆する。これに対してダイヤモンドは、「(新型コロナが)早期に終息し、経済活動の再開に比較的早くこぎ着ければ、実体経済の回復が遅れたとしても、株式市場はバブルの色彩を帯びるシナリオが現実味を増す」とし、さらに「終息がずれ込んでも夏前までに事態が落ち着くなら、株価はいったん二番底へと向かうものの、追加の金融・財政出動で景気は底割れを回避し、株価は上向く」と楽観的な見通しを立てる。つまり新型コロナが終息しなければリーマン・ショックを超える「大恐慌の到来」を覚悟しなければならないということになる。

◆過度な金融緩和戒め

 そして、経済3誌の第2のポイントは、新型コロナが世界に投げ掛ける現代的な意義について。確かに、各誌が取り上げるそれぞれのテーマを見れば、テレワークなどの企業内での勤務形態の変化や企業の資金繰り、さらには政府や自治体からのさまざまな規制によって企業の苦戦ぶりが随所に描かれているが、問題は100年に1度といわれる今回のパンデミック(世界的大流行)が、現在の資本主義世界あるいは世界のパラダイム(秩序)にどのような影響を与えることになるのか、という点である。

 そこに焦点を当ててみると、エコノミストで法政大学教授の水野和夫氏が次のように述べている。「(新型コロナは)過度な金融緩和への依存とクローバル化への戒めだ。行き過ぎた金融緩和はバブルをもたらし、その崩壊は人々の生活を痛めつける」と指摘、さらに「中国はじめ新興国は経済成長を優先しすぎた。生活習慣や公衆衛生が近代化に追いつかず、一部の風土病が世界を大混乱に陥れている。コロナはその序章に過ぎないかもしれない」とした上で、ポスト資本主義として、「『より速く、より遠く、より合理的に』という資本主義から『よりゆっくり、より近く、より寛容に』という社会への構築を急ぐべきだ」と結論付ける。

◆自国中心主義加速も

 その一方で、ダイヤモンドは「グローバル化が進み国境はなくなったといわれてきた。しかし、今回のような世界的な危機が起こると、国境の存在感はむしろはっきりと強まる。どれだけグローバル化が進んでも、危機から国民を守る責任はそれぞれの国が負っているからだ」(船橋洋一・アジアパシフィックイニシアティブ理事長)との見解を載せ、新型コロナ終息後は、米国と覇権的な中国を軸とした対立を含みながら自国中心主義が加速する可能性が大きい。

 人類は水野教授が言うようにサスティナブル(持続可能な)世界の構築を目指すべきか、それとも自国中心的な政策運営を是として突進していくのか、新型コロナは人類に対しその回答を求めているように思えてならない。

(湯朝 肇)