感染拡大で中国がアフリカで築いた基盤が大打撃と指摘する米紙

◆感染爆発なら大惨事

 中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の一環としてアフリカで築き上げてきた基盤が、新型コロナウイルス感染拡大に端を発する世界経済の縮小や中国でのアフリカ人「差別」への反発を受けて、大きな打撃を受けるとの見方が出ている。

 米政治専門紙ポリティコ(電子版)は、「コロナウイルスで、中国のアフリカでのハネムーンは終わる」と主張、「長年にわたって中国が慎重に築き上げてきたものがひっくり返る」との見方を明らかにした。

 今のところ、アフリカの感染規模は欧米と比較してそれほど大きくはない。統計サイト「ワールドメーター」によると、アフリカの55カ国・地域全体の感染者は約2万人、死者は1000人を超えた。

 経済、医療インフラが脆弱(ぜいじゃく)なアフリカで感染爆発が起これば大惨事になるとの予測は以前から出ている。国連アフリカ経済委員会(UNECA)は17日、少なくとも30万人が死亡し、2900万人が極度の貧困に陥る可能性があると予測。1000億㌦の支援を呼び掛けるなど、国際社会も影響の緩和へ対策を練り始めている。

 中国はアフリカでのインフラ整備に伴い、巨額の融資を行っており、米ジョンズ・ホプキンス大の調査によると、2000年から17年に、大規模インフラ整備のために約1430億㌦をアフリカ諸国に貸し付けている。

 英シンクタンク、海外開発研究所(ODI)によると、対外債務に占める割合はケニアで33%、エチオピアで17%に達するという。

◆債務減免を求める声

 そのため、国際通貨基金(IMF)や20カ国・地域(G20)が、アフリカ各国への債務の減免を呼び掛けた。その主な標的は言うまでもなく中国だ。

 ポリティコによるとIMFは15日、サブサハラ(サハラ砂漠以南)の国内総生産(GDP)が、新型コロナ、原油価格の低下などで1・6%減少するとみている。IMFは、25カ国への2億1500万㌦の債務減免を承認したものの「債務全体の額から見るとごくわずか」だ。米中などを含むG20は、今年末までの返済猶予を提案、これに対しフランスのマクロン大統領は、「大規模な免除」を要求したという。いずれにしても、中国にとって大きな打撃となることは避けられない。

 ポリティコは、「G20の年末までの返済猶予の決定に中国が否定的であることに反発が強まっている」と指摘している。

 さらに中国とアフリカ諸国との関係を悪化させる出来事が起きた。中国南部の広東省広州で、ナイジェリア人などが多く住む「リトル・アフリカ」と呼ばれる地域で、感染が拡大しているとしてアフリカ出身者らが自宅を追われ、強制的に検査や隔離が行われていることが伝えられた。家を失い、路上で寝ている映像がネットで流れ、アフリカ各国から強い反発の声が上がった。これを受けて、アフリカ各国の大使らが中国政府に抗議の書簡を送るなど、中国との関係にも長期的な影響を及ぼすのではないかとみられている。

 ポリティコによると、中国も火消しに躍起だ。中国のアフリカ連合(AU)大使、劉豫錫氏は、アフリカ各国からの大使と肘をぶつけ合ってあいさつする「エルボーバンプ」の写真を公表。関係は良好とアピールすることを狙ったもののようだ。

◆影響力の低下は必至

 AUへの中国の政治顧問はポリティコにコメントを寄せ、G20の返済猶予を順守し、「支援するためにあらゆる措置を取る」ことを明らかにした。また、広州でのアフリカ人差別については、「中国とアフリカの関係は盤石であり、個々の出来事に影響を受けることはない」と訴えた。

 いずれにしても、中国のアフリカでの影響力の低下は避けらない。中国を発生源とする新型コロナは、アフリカでもブーメランのように跳ね返っている。(本田隆文)