新型コロナ禍への緊急経済対策で「迅速さ」「大胆さ」を求めた各紙

◆多くが現金給付提案

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。イベントや外出の自粛が続き、経済活動も臨時休業や生産の縮小・停止、働き手にとっては自宅待機にとどまらず解雇という事態も増えている。

 2020年度予算が成立したばかりだが、政府は補正予算での経済対策の取りまとめに動かざるを得ない現状である。

 経済対策について各紙はそろって社説を掲載、見出しは次の通りである。3月28日付読売「当初予算成立/危機対策の財政出動を迅速に」、日経「家計と企業を支える経済対策を早急に」、29日付産経「緊急経済対策/大胆な現金給付が必要だ」、31日付朝日「緊急経済対策/長期戦に安心の備えを」、毎日「コロナで大型経済対策/迅速な生活支援が優先だ」、東京「現金給付/全世帯を対象に素早く」、4月1日付本紙「コロナ経済対策/一律10万円で現金給付急げ」――。

 当然といえば当然だが、「迅速」「大胆」の言葉が並び、政府が打ち出した「現金給付」についても、ほとんどが所得の線引きせずにスピード重視を求めた。

 まず、その現金給付について。読売「対象を限定すると、所得の線引きや所得減少の認定に手間取る恐れはないのか。スピード重視で制度設計する必要がある」、産経「ターゲットを絞り込むことは効果を減じる恐れがないか」、毎日「収入で線引きすると対象の絞り込みに時間がかかる。手元に届くのが遅くなればセーフティーネットの役割を果たせない」という具合である。

 ただ、読売は前述の内容にとどまり、具体例は示さなかった。産経も「金額を示さなかったが、前例にとらわれず、極めて大胆なものにしなければ意味がない」と注文を付けたものの、注文を付けた金額などの例示はなしである。

 示したのは毎日、東京などで、毎日は「まず全国民一律に配る方が迅速だ」とし、東京も実際の給付が始まった後、社会の不公平感が高まり、混乱が生じる恐れも否定できないとして「スピードを最優先し、分かりやすく全世帯給付とするのが最も効果が上がる方法ではないか」と提案。本紙は「一律一人10万円」と金額まで挙げた。

 一律給付では富裕層も含まれることになるが、毎日は「納税段階で税を多く徴収し公平を図る案も検討していいのではないか」と提案したが、一案である。本紙は「年収1000万円以上の世帯は1割程度であり、所得の多い少ないに殊更(ことさら)こだわる必要はない」とした。

◆日経は「一律」に異論

 これに対して、日経は「家計の所得補填が重要なのは確かだが、より厳しい環境に置かれた低所得層を優先するような工夫があっていい」と他紙と若干異なる視点を示した。

 ただ、その工夫に時間がかかるようでは、同紙が強調する「まずは収入の道を断たれた家計や資金繰りに窮する企業の支援を急ぐべきだ」との指摘もままならなくなる。今後の教訓としてなら分かるが…。

 朝日は「具体策として、収入が急減した世帯や中小企業に向けた給付金が検討されている」と記すのみで、自治体に政府の支援を補完する「状況の変化や地域の実情に応じ、きめ細かな対応を考えてほしい」とした。

 感染収束後の景気対策については、読売が「最も重要なのは、内需の柱である個人消費の押し上げである」として、効果を高めるため消費額の大きい高所得者も含めた支援が望ましいとし、また一律の現金給付より「買い物や外食などに幅広く使える期限付きの商品券が有効だろう」とした。本紙も同様の商品券を提案している。

◆消費税減税には両論

 野党が求め、自民の一部でも言われだした消費税減税については、読売と産経の2紙が言及。読売は「レジ改修など小売店の負担が重いといった課題が多い」と否定的な見方を示したのに対し、産経は「選択肢の一つとして残しておくべきだ」と論評が割れた。

(床井明男)