新型コロナの世界経済への影響はリーマン・ショック時以上と各誌予測

◆資金繰り破綻の恐れ

 中国武漢から発した新型コロナウイルスによる感染症。今やイタリア、スペインから米国に至るまでパンデミック(世界規模の大流行)の様相を呈し、猛威を振るう「武漢ウイルス」は医療、教育、経済などあらゆる分野に影響を及ぼしている。何よりも人類を不安に陥れているのは、今回の“コロナショック”が「特効薬がない」「いつ終わるか分からない」という状況があるのだが、とりわけ産業、経済分野において深刻だ。

 経済各誌は3月に入って相次いでコロナパニックを特集している。まず、週刊ダイヤモンドが7日号で「新型肺炎 世界連鎖株安 日本企業『総崩れ』」と題して緊急特集を組んだ。続いて週刊エコノミストが10日号で「中国発世界不況~新型コロナショック」と題し、中国経済の失速と世界経済への影響を分析した。

 その後、コロナが欧州に拡大するや否や週刊東洋経済が28日号で「羽田空港クライシス」、ダイヤモンド(同号)が「資金繰り破綻!連鎖倒産」、さらにエコノミストが「コロナ恐慌」(31日号)と新型コロナウイルスに絡んだ経済企画を打ち出している

 この中で、エコノミスト(同号)は現在の新型コロナウイルスによる経済への影響について「第1フェーズでは、世界の工場であり世界の市場である中国が機能不全に陥ったことで、世界経済は大きな打撃を受けた。第2フェーズでは、欧米主要国への感染の広がりによって、中国で生産した物を消費する国がないという状況になる恐れがある」と分析している。

 もっとも、世界経済の実情を見ると第3のフェーズに入っているようだ。というのも、日本を含めて欧米で感染が拡大することによって、自国の生産・経済活動の停滞が景気の後退をもたらし,それこそ金融破綻を引き起こす可能性も指摘されているからである。

◆変調を来す米国経済

 例えば、米労働省統計局が26日に発表した報告によれば、21日までに失業保険を申請した人数は330万人に上るという。これは1982年に記録した以前の最大記録69万5000人の5倍近くになる。問題なのは、これまで堅調な景気動向を示し、低失業率を続けてきた米国経済が新型コロナウイルスによって変調を来し始めていることを示していることである。

 東洋経済は、米国経済について次のように語る。「感染拡大が長期化すれば、本来健全な企業でも運転資金が回らず、流動性危機に陥る懸念が高まる。FRB(連邦準備制度理事会)がジャブジャブの資金供給をすることで、ファンドを含めた連鎖的な資金繰り倒産を防げるか。正念場を迎えた」(小野亨・みずほ総合研究所欧米調査部主席エコノミスト)。

 一方、欧州についてはエコノミストが、「欧州の危機的状況はこれからだ。中小企業の倒産やベンチャー企業の破綻などが次々と起こる可能性がある。資産運用会社を中心に注力している銀行なども引当金を積み増す必要があるだろう。イタリアは今月中にも金融機関の破綻が出てきてもおかしくない」(菅野泰夫・大和総研ロンドンリサーチセンター長)と警鐘を鳴らす。もちろん、日本国内においても深刻だ。

 ダイヤモンドは、「ウイルスは大地震のように生産設備へ物理的なダメージを与えるわけではない。感染が終息すれば経済活動はすぐに回復を目指すだろう」としながらも、「その間に企業の資金繰りが悪化して倒産が増えれば、リーマンショック級の深刻な景気後退に陥りかねない」(牧野潤一・SMBC日興証券チーフエコノミスト)と危惧を表す。

◆災害が度重なる日本

 安倍晋三首相は28日、新型コロナウイルスの感染拡大に対して、緊急経済対策としてリーマン・ショック時の規模を上回る新年度補正予算案を編成する考えを打ち出した。それにしてもここ10年を振り返れば、日本だけを見ても度重なる地震と津波、洪水、台風、大きな試練を受け続けてきた。そして今回の新型コロナウイルス。まさに今が正念場なのであろう。

(湯朝 肇)