様々な新型コロナ対策を求め緊急事態宣言の必要説かぬ「サンモニ」

◆ゴミ袋着る米看護師

 新型コロナウイルスの感染が日本でも芸能人やプロ野球選手など有名人にも確認され、首都圏の1都4県知事が外出自粛を要請するなど予断を許さない状況になった。

 26日に中国を抜いて感染者が8万3507人(米ジョンズ・ホプキンス大の集計)と最も多い国になった米国では、1カ月前の2月26日の感染者は60人だった。イタリアなどもそうだが、感染者の加速度的な増加が凄まじい。

 米テレビをネット上で見ると、MSNBC「モーニング・ジョー」で「今日、ニューヨークの医師や看護師たちはゴミ袋を着ている」と司会のジョー・スカボロー氏が強調し、ニューヨーク・ポスト紙に載る新型コロナを防ぐため黒いゴミ袋を病院で着用する3人の看護師の写真が出た。

 26日時点のニューヨーク州の感染者3万2741人、死者334人。番組は、防護服など看護師らが必要とする用具一式も揃(そろ)えないからだとして、2月26日の段階で感染対策に楽観的な記者会見を行ったトランプ大統領に矛先を向けるのだが、確かに超大国の米国がゴミ袋では、防護服を揃えた中国と比べてもあべこべな印象である。医療の受け入れ範囲を超えるオーバーシュートの怖さだ。

◆休校要請に賛否両論

 わが国でも小池百合子東京都知事は「感染爆発の重大局面」と深刻な認識を示し、政府は改正新型インフルエンザ特措法に基づく対策本部を設置。緊急事態宣言を行う態勢を整えている。

 同法が成立する前、8日放送のTBS「サンデーモーニング」では緊急事態宣言は私権制限を伴う面があるとの指摘とともに、安倍内閣の対応に異なる意見が出演者からあった。フォトジャーナリストの安田菜津紀氏は、入国制限が専門家会議を経ていない、臨時休校要請も科学的根拠が示されていないなど「緊急事態は安倍政権の中で起きている」と批判。

 毎日新聞論説委員の元村有希子氏は、中国湖北省に滞在した外国人に「2月1日から入国制限をかけたわけだから、その段階で中国へのもう少し厳しい入国制限や休校への対応をやっておくべきだった」と述べ、「1カ月遅れたのは失敗だ」と訴えた。

 また、他に「大事なのは緊急事態宣言を出すことではなくて、やるべきことを早くやること」(BS-TBS「報道1930」キャスター編集長・松原耕二氏)、「官邸主導の国難政治に巻き込まれている。今やることは検査であり医療であり研究だ」(寺島実郎氏)など、意見は様々(さまざま)だが緊急事態宣言の必要に理解を示す論者はいなかった。

 だが、ワクチンもなく開発には時間がかかる。欧米先進国でもできることは外出禁止だ。このため各国は非常事態を宣言して私権制限を伴う対策を取っている。むしろ出演者らの指摘について、政府は法を執行するのであり、緊急事態の法整備があればなおよいという思いを強くした。

◆中国発生すり替える

 ところで、寺島氏指摘の「国難」は安倍首相が起こしたものではない。新型コロナウイルスは中国湖北省武漢市で発生した。中国の初動に隠蔽(いんぺい)問題があったことは昨年末に告発した医師を取り締まったことで明らかだが、このような中国の問題に指摘がなく官邸批判ばかりでは、とんでもないすり替えになる。

 また、15日放送のフジ「日曜報道プライム」でも、新型コロナをどう捉えるか問われたジャーナリストの木村太郎氏が、「これは僕はエイリアンの侵略だと思う。目に見えないエイリアンが人間社会の中に侵入してきて、人間に取り憑(つ)く。取り憑いた中で年寄りをバリバリ食べちゃう状況が続いている」と述べた。

 こうなると中国も「エイリアン」の被害者で、“いち早く撃退した英雄”に仕立てないか。重症急性呼吸器症候群(SARS)の教訓もあり、ウイルス感染を招くような奇食を避け、食品衛生を徹底すべきで、「エイリアン」を生み、増殖したプロセスこそ問うてほしい。

(窪田伸雄)