中国発の新型肺炎で延期された習主席国賓来日は論外とする遠藤誉氏
◆世界の経済に大打撃
「多くの国に感染が広がった今、パンデミック(世界的な大流行)の危機が現実味を増している」(世界保健機関〈WHO〉のテドロス事務局長)
中国・武漢市から感染が世界中に拡大した新型コロナウイルス肺炎が猛威を振るっている。死者も中国と世界で4000人超え。感染者の拡大は震源地の中国で8万人を超すなど突出し、隣接する韓国や中国と関係の深いイラン、寄港を受け入れたクルーズ船内で広がった700人近くが上乗せされた日本などが多かったが、これらの国での感染防止効果がイランを除いて見えてきた。その一方で、「一帯一路」で中国との往来が盛んで感染者が1万人を超えたイタリアをはじめ、ドイツ、フランス、スペインなどがいつの間にかそれぞれ急増し新たな緊急事態となっている。
影響は各国の景気・経済にも大きく影響し、連日の株価の乱高下など世界金融市場を大混乱させた。各国は防疫対応とともに、景気対策などの緊急対応にも迫られている。
これらを受けて新聞論調も、新型肺炎と景気などに関連するテーマを連発して掲載している。そこで本欄では、これらにかき消されかねない、まったく別の視点で提起された新型肺炎に関連する論考などをウオッチ。結果的に本紙記事だけになったのはご容赦を。
◆中国の罠に嵌る日本
論考はいずれも本紙第1面記事である。まず「インサイト2020」(5日付)に寄稿した遠藤誉氏(中国問題グローバル研究所所長)は、ウイルスが蔓延(まんえん)して猛威を振るっている原因を「武漢市政府が(昨年)12月8日以来の患者の発症を隠蔽(いんぺい)したからだ」と隠蔽の事実を時系列で記した上で糾弾する。以下に簡略にまとめる。
1月5日の「これまでにない新型コロナウイルスだ」(上海公共衛生臨床センター)という検査結果の発表に対して、武漢市は「問題は既に解決」したと北京向けに取り繕う。年内に肺炎を公表し警鐘を鳴らした武漢の李文亮医師(のちに新型肺炎で死亡)を武漢公安は摘発(1月1日)。武漢市政府の虚言を信じ、李医師の警告を無視して習近平主席はミャンマー訪問(1月17日から)、19~21日まで春節の雲南省巡り。18日に武漢に派遣された「国家ハイレベル専門家グループ」の「SARS以上の危機」との判断報告が雲南の習主席に上がり、20日に習氏名の「重要指示」発布となった。
この瞬間から中国はパニックに突入。23日に武漢を封鎖したが、手遅れ。すでに500万人の武漢市民が中国全土に散らばった後だ。中国寄りと批判のある事務局長のWHOが緊急事態宣言を出したのは、ようやく30日になってからだが、渡航制限を設けないなど骨抜きの中身。それでも米、露、台湾、フィリピンなど数多くの国が中国からの入国禁止措置を取った。だが、習氏の国賓訪日を引きずった日本は甘い対応で初期の感染を広げたのだ。
遠藤氏はこう記した上で「新型肺炎の世界的パンデミックが示す通り、忖度と言論弾圧によって成立している中国共産党による一党支配体制は人の命を奪うということを人類に知らしめた」と指摘。その頂点に立つ人物の国賓招聘(しょうへい)に大いなる疑問を突き付けた。中国の「(国家戦略の)罠(わな)に嵌(はま)っていることに気付かなければならない」とまで説く。新型肺炎問題で習氏の訪日は取りあえず延期されたが、事態が落ち着いた後、政府は改めてその是非を冷静にしっかり検討する必要があることに留意すべきだ。
◆発生源追及忘れるな
同じく新型肺炎問題に関して、本紙(6日付)は米国人口調査研究所所長・スティーブン・モッシャー氏の特別寄稿を掲載した。氏は習氏が2月14日の北京での緊急会議でバイオ研究施設の安全対策強化を指示したこと、翌日に中国科学技術省が「微生物研究施設のバイオセキュリティー管理強化に関する指示」を出したこと、軍の生物兵器専門家の現地入りした事実などから、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から拡散した可能性が高いとの分析を示した。これは何かが隠されていることを示唆する。事態収束の後、この問題の追及も忘れてはならない。このほか「ビル・ガーツの眼」(7日付)は、あろうことか中国は今回のウイルス発生源として「米CIA陰謀説」を拡散していると指摘。偽情報だが、これについて言及するスペースは尽きた。(堀本和博)










