新型肺炎という「有事」に日本の“欠陥”を指摘した「プライムニュース」

◆有事を想定せぬ憲法

 中国共産党の情報隠蔽(いんぺい)が新型コロナウイルスの世界蔓延(まんえん)につながったことは明らかなことから、日本のメディアでは隠蔽体質をはじめとした中国共産党の一党独裁体制の「病弊」に焦点を当てた報道が目立った。しかし、新型コロナがあぶり出したものはそれだけではない。憲法から個人の生活まで「有事」を想定することを避けるというわが国の“欠陥”もその一つであろう。

 BSフジの報道・討論番組「プライムニュース」は4、5の両日、「日本の危機管理」がテーマだった。国家の危機管理レベルは「初動」に現れると言われる。新型コロナ対策で、いち早く中国全土からの入国禁止措置を取った米国などと違い、わが国は「初動対応が甘い」「泥縄対策」などと批判が出ているが、なぜそうなったのか。

 「3人の元統幕長に聞く 自衛隊に見る危機管理 日本の防疫対策に直言」をテーマにした5日放送には元陸将の折木良一、元空将の岩崎茂、元海将の河野克俊の統合幕僚長経験者3人が出演した。新型コロナの拡大については、「国家の危機管理事態であることは間違いない」(折木)、「ほぼ有事に近い」(岩崎)、「有事と捉えるべきだ」(河野)と3人は「有事」との認識だった。

 その上で、河野は「危機管理は最悪を想定して対応する」のが基本だが、憲法で戦争を放棄したことで「戦後、日本は有事を想定した国ではなかった。その点で諸外国と違いが出ている」と、“平和憲法”が日本の危機管理の甘さにつながっているとの見方を示した。

◆必要な緊急事態条項

 また、日本の危機管理意識の低さを是正する具体策については、4日放送「新型コロナと国の覚悟 日本の危機管理に課題」にゲスト出演した国家基本問題研究所理事長、櫻井よしこは次のように語って、憲法に緊急事態条項を設けるべきだと強調した。

 「新型コロナウイルス問題を単独の問題と考えてはいけない。安全保障・国家存亡の問題として、本質的に捉えてみると、今やらなければならないのは、お医者さんを用意する、お薬を開発するとか、そういったことも大事だが、それを全部含んだ上で、日本人と日本国がどう生き残るか、というまさにその問題ですから、私はきちんと根本的なところから手を付けた方がいい」

 わが国のリベラル勢力は、憲法は権力を縛るためにあると主張するが、憲法には権力を縛るだけでなく、行動に根拠を与える役割もある。歪んだ「立憲主義」を正し、緊急事態条項を設けて、政府が有事に際し迅速かつ強制力のある行動が取れるようにすべきだという主張には説得力がある。

 政府は9日から、感染が拡大する中国と韓国からの入国者に、指定した場所に2週間待機し、公共交通機関を使わないよう要請するが、強制できないところに、現行法体系の限界が現れている。

◆これからが正念場に

 新型コロナは、日本の国家としての在り方だけでなく、国民一人ひとりに意識の変化を求めている。ネット上に流れたデマ情報から、スーパーの棚からトイレットペーパーなどが消える事態になったが、そんなパニックが起きるのも平和憲法が国民の間に“平和ボケ”を広めたからではないのか。有事に際しては、国民一人ひとりの自制心が試されることも忘れてはならない。

 前出の岩崎は「一丸 冷静」という文字を示しながら、「総理が(学校の臨時休校・イベント自粛などの要請を)決心したのであれば、国民がその方向に一丸となって動くことが一番大切。それからデマに惑わされることなく冷静な対応が重要だ」と訴えた。櫻井も次のように視聴者に呼び掛けた。

 「3・11の時、自分のことも守るが、自分よりももっと弱い人のことを守ろうと、一生懸命に行動し、世界中に賞賛された。他者のために、自分の何かを犠牲にする精神を持っていて、それを実行できる国民はそんなに多くない。日本人はその国民の一つだと思う」

 これからが日本国、日本人の正念場だ。(敬称略)

(森田清策)