新型肺炎に“撲滅”か“共生”かの方針を政府に迫る「日曜報道」橋下氏
◆一斉休校を強く主張
中国湖北省武漢市で流行した肺炎をもたらす新型コロナウイルスが世界に広がり、わが国でも、学校の臨時休校や一部の地方では緊急事態宣言に踏み切っている。安倍晋三首相を本部長とする政府新型コロナウイルス感染対策本部は25日、「水際対策」から流行抑止へと切り替える対策の基本方針をまとめ、27日には全国の小中高校に春休みまでの臨時休校を呼び掛ける前例のない状況になった。
これを先取りしたかのように23日の報道番組の中で強く訴えていたのが、フジ「日曜報道ザ・プライム」に出演した元大阪府知事、元大阪市長の橋下徹氏。新型インフルエンザが流行した2009年5月に、一斉休校を当時の舛添要一厚労相に要請し大阪府で実施した経験がある。
まず、政府に対して「インフルエンザのように共に生きていくのか、天然痘のように撲滅するのかどちらにするのか」と、新型コロナウイルスについて方針を早く示すように促し、「1週間ぐらいの休校をやったらどうか」と主張した。
その理由は感染流行のピークを遅らせるためで、「僕が大阪府で一斉休校を掛けたのは(新型インフルエンザが)高校生に広がりつつあると同時に、大阪の医療機関の態勢が整っていなかったために時間稼ぎをするためだ」と指摘した。当時も波紋を呼んだが説得力のある主張だった。
◆いずれ共生やむなし
今回の政府の休校の呼び掛けは、春休みに掛かるため丸1カ月と「1週間」を優に超える。ただイベント自粛、外出自粛、時差別出勤、渡航制限、テレワークの要請…3月は東日本大震災の時と同様、非常事態の空気が列島を包むだろう。
無論、対策に有効な時間稼ぎとなってほしいが、いつまで続くのかという不安もある。橋下氏はコロナウイルスとの“共生”もやむなしとの考えだ。このため「時期がきたら学級閉鎖」と、いずれインフルエンザに類似した措置にすべきとの見解だった。
同番組に出演した櫻井よしこ氏は、新型コロナウイルス対策について「政治家はこういうことに素人だ。専門家がもっと機能できる国としての仕組みを考えなければならない局面でもある」との認識を示し、「上手にコントロールするという知恵を働かせるべきだと思う」と述べていた。
実際、そのような機能や働きを早く創出して実施に移すことによって、自粛や休校の後には新型コロナウイルス感染があっても日常を取り戻すようにしなければならない。もはや南極を除く全大陸に拡散したウイルスの撲滅は不可能だ。
◆当初デマとした中国
TBS「サンデーモーニング」も新型コロナウイルス感染に冒頭から入ったが、看板コーナーの「風をよむ」で「感染症と差別」をテーマに扱っていた。日本からの救援物資に感動する中国の人々という友好的な場面の一方で、ウクライナで中国からの帰国者を追い出そうとする衝突、オランダや日本でも中国人来るなとのアピールがあることを取り上げた。
ここで感染症と差別が過去どのような惨劇をもたらしたかという例に、中世の欧州で大流行したペストについてユダヤ人が井戸に毒を入れたなどのデマにより、ユダヤ人虐殺が起きた歴史を指摘。もちろん、差別はよくない。が、何かごまかされた印象だ。
というのは、ペスト流行の中世のデマと違って、新型コロナウイルスは中国・武漢からの発生とはっきりしている。情報公開に懸念を抱いた良心的な地元の医師によってインターネット交流サイト(SNS)で警鐘が鳴らされ、それをデマとして取り締まったのは中国共産党政権の当局者たちなのだ。責任論を差別で曖昧にできない。
むしろ、初期の感染者数が少なかった当局発表をデマと言うべきで、そのような隠蔽(いんぺい)体質の下で感染が拡大してしまい、あってはならないことだが多くの人民が差別の巻き添えを食っている、という構図であろう。
(窪田伸雄)