新型肺炎対策で「習氏先手」と報じる朝日はまるで「中国の宣伝機関」

◆政府の対応に後手感

 マスクは売り切れ、学校は一斉休校。修学旅行を中止や延期した学校は全国で2000校に上り、京都や神戸の観光地や繁華街では客足が激減し大打撃を受けた―

 これは2009年5月、豚インフルエンザから変異した新型インフルエンザ騒動が日本列島を包んだ時の話だ。時の厚労相は後の東京都知事、舛添要一氏。8月には初の死者が出たため麻生政権は流行宣言を発表するが、総選挙で惨敗し下野した。それに合わせるかのように新型インフルエンザ騒動は終息した。

 むろん政権交代とは関係ない。麻生政権が感染症対策で失敗したわけでもない。ワクチンがあり、致死率も低かった。当時、本命視されたのは致死率が6割以上に上る強毒性の鳥インフルエンザで、政府は対策を練っていた。

 ところが、政権交代である。舛添氏に代わって厚労相に「ミスター年金」と称する長妻昭氏(現立憲民主党代表代行)が就任。年金ばかりに目を奪われ、感染症対策はなおざりにされてしまった。今回の新型肺炎では、厚労省の対応は初めての経験のように浮足立っている。腰を据えての総力戦でなく、場当たり的な「戦力の逐次投入」に終始している感がする。

 これでは危機管理はおぼつかない。野党はそんな政府を国会で追及しているが、天に唾するとはこのことだ。もとより安倍政権は7年も続いている。いつまでも前政権のせいにはできない。きょう、ようやく基本方針を発表するというが、後手感は免れない。

◆危機感に水差す社説

 メディアで能天気なのは朝日である。23日付社説は相変わらず「桜を見る会」で、「首相の説明 破綻明らか」と気勢を上げている。数えてみると、今年に入って「桜」を俎上(そじょう)に載せたのは実に8回。ほぼ毎週1回、社説で安倍批判を繰り広げている計算だ。「破綻」といっても見解の相違のレベルで、大山鳴動してこの程度の話。

 これに対して朝日社説が新型肺炎を初めて取り上げたのは1月25日付。中国の春節(24~31日)の大移動が始まり、当局が発生源の武漢を「封鎖」してからのことだ。おまけにこう言ってのけた。

 「世界保健機関(WHO)は『現時点では国際的なレベルでの緊急事態には当たらない』と判断した。中国の国外ではヒトからヒトへの感染が確認されていないことなどを踏まえた見解だ」

 ご丁寧にも危機感に水を差している。産経と毎日はその1週間前の18日付社説でいち早く警鐘を鳴らし、習近平政権の対応の遅さを批判していた。習氏が「重要指示」を出したとされるのは1月20日で、それを踏まえて朝日は社説で取り上げたのか。朝日の能天気は中国への“配慮”の賜物(たまもの)としか思えない。

 その姿勢は今も続く。2月23日付「時時刻刻」(特集欄)は「武漢疲弊、逃げ場なし 1100万人都市、封鎖1カ月」と現地の様子を伝え(と言っても電話取材)、「『緊急事態』阻止へ、習氏先手」と題する記事ではこう書く。

 <北京から『中央指導組』として現地入りしている丁向陽・国務院副秘書長が、2月20日の記者会見で真の命令者を明かした。

 「1月22日に武漢に入った孫春蘭副首相が、習近平(シーチンピン)総書記の指示に従い武漢の交通を遮断するよう求めた。これがいわゆる『都市封鎖』だ」>

◆当初は首相に丸投げ

 まるで人民日報(共産党機関紙)よろしく「真の命令者」が習氏と喜々として報じている。新型肺炎の発生後、習氏が対応を李克強首相に丸投げするような態度を取り、北京の病院を視察したのは2月10日のことで、中国人民も習氏の「後手」に疑問を呈している。それを朝日は「習氏先手」とするのだから恐れ入ったと言うほかあるまい。

 米国務省は新華社通信など中国メディア5社を「中国の宣伝機関」と認定したが、朝日も加えて6社にしてしかるべきである。

(増 記代司)