新型コロナウイルスの「デマと真実」を検証し簡潔にまとめた朝日

◆淡々と40項目を羅列

 新型コロナウイルスで不安や混乱が増している。人混みや電車の中で咳(せき)やくしゃみをされると体が反応して思わず身をよじる。こんな時こそ、正確な情報の周知徹底が必要だ。メディアの役割がそこにある。

 週刊朝日(2月28日号)の特集「コロナデマと真実、徹底検証40問」がいい記事である。いたずらに不安を煽(あお)るでもなく、必要なこと、疑問に思うことを簡潔にまとめ、専門家のコメントで締めている。

 そして、記事の仕立てもことさらに政府対応を責めるでもなく(もちろん、危機管理の甘さなどの指摘はあるが)、この事態にどう向き合い取り組めばいいか、何ができるか、を淡々と40項目にわたり羅列した。

 例えば「日本で感染はどこまで拡大するのか?」について、「国立感染症研究所」は「一人の感染者が首都圏の電車に乗れば10日目に12万人に拡大するとシミュレーションしています」という。ただし「必要以上に不安に陥ることはない。感染=発病ではないし、多くの人にとって発病=重症ではない」と「川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦医師」が指摘する、といった具合だ。

 ほかに「どんな症状が出たら病院にかかればいいの?」「陽性と診断されたら?」「エアロゾル感染は起こるのか?」などの項目に続いて、「くらし・生活編」として、マスク、詐欺、健康管理など生活分野の注意点、「休むと給料は補償してくれる?」「世界恐慌になる?」「外国人観光客は?」などの疑問に答え、最後に「東京五輪はどうなる?」で締めくくっている。それぞれの答えは同誌で確認していただきたいが、的確に専門家が答えているので参考になる。今、必要な情報はまさにこうしたものだろう。

◆不安煽る新潮の記事

 とはいえ、課題としていずれ徹底検証すべきなのは、中国当局と世界保健機関(WHO)の対応だ。今後の世界中の健康問題に影響する。もっと早期に対処していたら、もしかしたら武漢で封じ込められていたかもしれない、という思いは世界共通だろうし、横浜・大黒埠頭(ふとう)のクルーズ船への対処も変わっていたかもしれない。彼らの責任は重大だ。

 週刊新潮(2月27日号)は少し不安を煽るような記事を載せている。「自分が罹っているのでは」と不安になった時、どうしたらいいのか、あるトラック運転手のケースを挙げて示した。熱が「37・5度」あればいいのか「38度以上」なのか、掛かり付け医(町医者)に行っていいのか、「濃厚接触」とはどれくらいを言うのか、何日間外出しては駄目なのか、等々が分からないというのだ。

 ただ、今回は事態がまだ完全には掴(つか)めておらず、情報が錯綜(さくそう)して、行政も保健所も混乱している中で、その混乱をそのまま伝えたところで、何かに資するとは思われない。もう少し新潮らしい捻(ひね)り方があったのではないか。

◆文春は政府責任追及

 “反安倍”を鮮明にして憚らない週刊文春(2月27日号)は「新型肺炎は人災だ」の記事で、「加藤勝信厚労大臣や厚労省の責任は重い」と責任追及の記事を載せた。世界から批判を受けているクルーズ船への対応のことだ。

 確かに報道を見ていて、船内感染は“閉じ込めた”ことが原因のように見える。だが、実際は、この措置はベストでないにしても、妥当なものだったという評価もある。武見敬三元厚労副大臣(参院議員)は「クルーズ船から国内に感染が広がることを阻止することだ。これは成功した」とツイートしている。これは同誌の締め切り後のことだが、他にもある同じような評価の声を切り捨てるのはフェアじゃない。

 責められるべきは、中国からの入国を全面規制しなかったことだ。米国、ロシア、北朝鮮などはいち早く入国禁止した。安倍政権がそれをしなかった理由は、経済(貿易)や訪日旅行者への影響を考慮したからだ。さらに「習近平主席国賓訪日」に支障が出ることを恐れたと同誌は指摘する。官邸内でどのように方針決定されたのか、細かく伝えてほしい。首相補佐官と厚労省審議官の不倫(文春トップで報道)よりも、こっちの方が重要だ。

(岩崎 哲)