氷河期世代の就職・就労支援に焦点当て問題点を指摘した東洋経済

◆引きこもりが問題化

 人口減少が進むわが国において、近年ほど労働環境の変化が著しい時代はないといって過言ではない。過労死ラインを超える時間外労働がたびたび問題化される中で、以前のような残業を強いる雇用形態は消失しつつある。併せて、従業員に副業を認める企業も増えつつある。 

 生産労働人口(15歳から65歳まで)が減少し、人手不足が叫ばれる中でより有能な人材を確保したいという企業の思惑があるが、その一方で正社員になれない非正規雇用労働者は依然として多く、さらに氷河期世代の引きこもりは社会問題にもなっている。政府は今年、氷河期世代に対して就職支援に乗り出すというが、果たして妙策はあるだろうか。

 こうした氷河期世代の就職・就労支援に週刊東洋経済(1月25日号)が焦点を当てた。「『氷河期』を救え!」といささか扇動的な見出しが立つ。そもそも氷河期とは、一般的に1993年ごろから2005年ごろまでの時代を指す。1990年以降のバブル崩壊に伴う不況の長期化で93年ごろから就職難が社会問題化する。この就職難にぶち当たったのが70年から82年度に生まれ、現在は40歳前後の年齢にある世代だった。この階層は全体で約1700万人に及ぶが、その中には大学を卒業しても正社員就職先がなく、フリーターや派遣社員など非正規労働者として過ごすことを余儀なくされている人たちが他の階層に比べて多いことから氷河期世代と呼ばれるのである。

◆親と同居するニート

 東洋経済の調べでは、フリーターは一時期に比べ減少しているものの、氷河期世代のニート(非求職無業者)の数は増加傾向にあり、2017年には40万人近く存在する。このうち4割は単身世帯。しかもその中で年収100万円未満が66%を占めるという。他方、ニートの6割は親との同居となるが、親が働けるうちは年収も若干高めになるが、親がリタイアしたり死亡したりすれば生活は困窮することになる。年収が100万円未満では結婚などは難しく、心身は不安定になり引きこもりになる場合もある。内閣府の昨年3月に発表した調査では40歳から64歳までの引きこもり人数は約61万人と推計している。

 ところで政府は20年度から建設やIT、農業、運輸などの業界団体と連携して氷河期世代の支援策を実施する。これまでの支援策に加えて、1~3カ月程度で取得できる資格・技能があれば正社員に雇用される職種を対象に、その間の資格取得費用や経費を支給する「短期資格学習習得コース」は目玉の一つ。コースを受けることのできる対象はフリーターやニートなど45歳未満とするなど氷河期世代にフィットした内容になっている。

 ただ、氷河期世代支援対策で押さえておかなければならない点について、同誌では次のように指摘する。「多くの人が、就労支援と言いながら実際は就職支援をしている。正社員であろうとアルバイトであろうと『雇われる』ことを支援するのが就職支援だ。雇われるためには一定の型にはまる必要が出てくる。それはひきこもっていた人にとってはハードルが高いし、とくに若い世代にとっては窮屈だ」と育て上げネット代表理事の工藤啓氏がインタビューで答えている。

◆きめ細やかな対応を

 政府の掲げた支援策で全ての氷河期世代をカバーするには限界があるというわけだ。「私たちの活動の目的は面接試験に合格する人をつくることではない。その人に合った『働く』を一緒に考え、伴走していくことだ」(同氏)とも語る。

 40歳前後の引きこもりの方々をケアする姿勢と手法は、学校教育で引きこもりの生徒に向き合う姿勢と相共通するところがある。引きこもりの人々と向き合うには、単に支援制度を振りかざすのではなく、きめ細やかな対応を取ることができるかに懸かっている。

(湯朝 肇)