「朝生」パネリスト形無しの靖国参拝問う視聴者アンケート支持7割

◆目立った孤立化批判

 未明から早朝にかけて行われる政治テーマを中心にした討論番組「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日)は今年で27年を数える長寿番組だが、スタッフは今回ほど自分たちの番組の影響力の無さを思い知ったことはなかったのではないか。

 元旦未明から早朝にかけて行われた今回のテーマは「激論! 中国・韓国、米国とニッポン」だった。ただ、12月26日、安倍晋三首相が靖国神社を参拝したことで、議論の中心は当然この問題になった。

 パネリストの意見で目立ったのは、海外から批判を浴びて日本は孤立してしまっていると、首相の参拝に反対する内容だ。例えば、民主党幹事長代理の辻元清美が「日本には大きなマイナス要因。中韓だけでなく、オーストラリアもかなりきつい調子で非難をした。EU(欧州連合)もロシアもそうです」とまくし立てれば、「今、日本は国際的に孤立していますよね」(元外務省国際情報局長の孫崎享)、「日本は世界中から批判をあびている」(東海大学准教授・金慶珠)と、辻元に同調する意見が続出した。

 パネリストの意見以上に悲観的だったのはテレビ朝日のアメリカ総局長・岡田豊の現地報告。安倍首相の靖国神社参拝に、米国政府が「失望した」と表明したことについて、「米国の『失望した』という言葉は日本人が思うよりも強い言葉ではないか。アベノミクスで稼いできた米国の信用を、安倍さんの靖国参拝が大きく崩してしまった、とこちらの外交筋はみている」と、まず軽くジャブを放った後こう続いた。

 「あるシンクタンクはポスト安倍カードの想定を始めた。これは日本に対するある種の牽制(けんせい)なのかもしれないが、そういう情報も伝わってきている。一番気になるのは、米国が安倍さん、あるいは日本に対して、ペナルティーやプレッシャーをかけてこないかということ。今回の靖国参拝の事態収拾を丁寧に急いでやらないといけない重要な局面に入ってきている」と、あたかも米国が安倍政権を見限ったかのような情報を伝えた。

 最後には「アベノミクスを一生懸命やっているはずの安倍さん。自分個人の政治信条に突っ走ってしまったのではないか。『アベノミクスは大丈夫か』という不信感が浮上してきたんですね。新年早々、日本売りが始まるのではないか、とみる市場関係者はいる」と、危機感を煽(あお)った。

◆司会が情報源に疑問

 安倍首相の靖国参拝に対して、オバマ政権が困惑したのは事実にしても、岡田が予断をもって偏った情報だけを並べたと分析できるのは「外交筋」「あるシンクタンク」「市場関係者」と、すべて曖昧な情報源になっているからだ。

 これには、司会の田原総一朗も「あの報告、おかしかったね」「ニューヨークの特派員は『米国がこうする』と言って、日本が酷い目に遭うぞというが、あれは自虐史観なんだわ。どうもジャーナリストは自虐史観が強くてね。自分(の国)の悪口を言うのが好きなんだ」と嘆いた。

 自分が務めるテレビ局の番組で批判されたのだから、アメリカ総局長は立つ瀬がないが、その岡田だけでなく、安倍首相の靖国参拝に否定的な意見を述べたパネリストたちにショックを与えたのが、番組の最後に発表された視聴者アンケートの結果だった。安倍首相の靖国参拝に対する「支持」71%、「不支持」29%と、支持派が圧倒的多数を占めたのだ。

◆意味ない調査結果か

 この結果に、参拝支持派のジャーナリスト・山際澄夫は「これはフェアな数字」と納得した様子だった。これに対して、反対派は「日本は孤立した」「世界中から批判されている」と、あれだけ批判しながら、彼らの意見がまったく説得力を持たなかったのだから苛立ちは隠せなかった。パネリストの一人で、社会学者の古市憲寿などは調査結果を「統計的に意味のない数字」と捨て台詞を吐く始末。

 視聴者からの電話とファックスによる調査だから、多重投票の可能性は否定できないが、だからと言って、実態から懸け離れた数字というわけでもない。「週刊文春」が同誌のメルマガ読者を対象に行った調査では、参拝支持は約75%だったという。古市が言うように、意味のない調査なら初めから視聴者アンケートなんて取るべきではないのである。(敬称略)

(森田清策)