COP25で日本は原発復活への国際理解得る好機逃したと指摘する産経
◆足並みの乱れ目立つ
南米チリ開催の予定が治安悪化で返上され、一時は今年の開催が危ぶまれた国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)は今月2日から、スペインの首都マドリードで代替開催された。13日までの会議日程は2日延長して議論を続け、2020年から始まる地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で各国に温室効果ガスの削減目標の引き上げを促す成果文書を採択して一応の形を付けた。しかし、温暖化対策の強化を求める運用ルールのうち、温室ガス削減量の国際取引の仕組みについては合意できずに来年のCOP26に持ち越すなど国際協調の足並みの乱れも目立つ会議となった。
今回のCOP25の評価については、当の国連のグテレス事務総長が「結果にがっかりしている」とツイッターに投稿している。パリ協定は、産業革命前からの世界の気温上昇を2度未満、できれば1・5度未満に抑える目標を掲げるが、現在の各国の目標では合計しても達成できない。そこで、グテレス氏は目標引き上げを強く呼び掛けてきた。成果文書には「各国が20年に可能な限り最も高い野心を持って、現行の温室ガス削減目標を引き上げることを求める」とする文言が盛り込まれたが、「可能な限り」など自主的な判断に委ねる消極的な表現もあって目標引き上げを各国に迫る強い表現とはならなかったからである。
COP25閉幕後、各紙はいずれも危機感と対策の加速を論じ、日本との絡みを見据えた論調を展開したが、その視点では違いを際立たせた。
◆具体策は示さぬ朝日
まず書き出しは朝日(17日付)が「このままでは、地球温暖化の危機を回避できない。そんな不安が膨らんでくる」、産経(同)も「議論がまとまらず、地球温暖化防止の新たな枠組み『パリ協定』に黄信号がともった」と捉えた。読売(16日付)は「地球温暖化の影響と見られる異常気象が世界各地で起きている。各国が連携して、対策を加速させねばならない」と結論から訴える。その中で日経(17日付)は「温暖化対策の緊急性はわかっても実行に移すのがいかに難しいことか」「気象災害の多発などを防ぐのに必要な温暖化ガスの削減と、現実の政策との開きを見せつけた」と会議の状況そのままの解説から。
冒頭の危機感では一致する朝日と産経だが、それを受けての主張の違いは際立った。朝日は特に責任が重い中国、米国、インド、ロシアなど主要排出国が対策に「本腰を入れなければ大幅な削減は難しい。そのことを自覚するべきだ」と批判。石炭火力のウェイトが高い日本についても「どんなに省エネや再エネの拡大に努めても、石炭火力を使い続ける限り、温暖化対策を真剣に考えていないとみられてしまう」。それが世界の潮流だからと、安倍政権に「速やかに脱石炭へと方針を転換」せよと迫る。ここまで言うだけで、その先の具体的な解決策には踏み込まないのが朝日。「だから原子力発電も必要」とはならず、締めは朝日らしく安倍批判となる。
◆読売など再稼働支持
一方、産経はCOPの議論が「石炭を悪者にして糾弾することで満足」の感があると批判。日本が抱える、「エネルギー問題上の特殊性を参加国に」訴えるべきだったと主張した。「原発の再稼働が長期にわたって進まない状況下では、石炭火力を使わざるを得ない」こと。「日本が輸出する石炭火力発電所は環境性能に優れた設備」で、途上国の人々が生きる上で必要な「安価で安定した電力を供給できる」こと。COPの「目指すところは、全世界の人々の安寧に資すること」ではなかったのか、と事の本質論から論じた。さらに日本の削減目標「達成には原発の復活が欠かせないことへの国際理解を得る好機でもあった」のに小泉環境相が会議で主張しなかったのは「残念」だとしたのは卓論だ。
両紙の間で論を展開する読売、日経、小紙(17日付)も日本の削減目標達成に原子力発電所の活用の必要に言及した。読売は「安全が確認された原発の再稼働を進めて、安定電源を確保する」「旧式の石炭火力は廃止を急ぐ。火力への依存度を着実に下げていくことが重要」だと主張した。小紙も「国は30年度の電源構成について、原子力の比率を20~22%にし、火力を約56%に引き下げることを目指」す「道筋を明確にすることが目標達成に不可欠」と強調。日経は「火力、原子力、再生可能エネルギーなどをどう組み合わて使うか」改めて検討する必要に言及しているのである。
(堀本和博)