「桜を見る会」だけ争点化した国会に苦言を呈した「日曜報道」木村氏
◆テレ朝のランキング
令和元年の年末を迎え、臨時国会も9日に閉幕した。甚大な台風水害に対処する国土計画や人口減少問題に政治が新たな時代を開いてほしいが、国会の話は被災者が寒さに震える冬を通り越して春の「桜」ばかりだった。
野党が追及する首相主催の「桜を見る会」について8日の報道番組も取り上げ、テレビ朝日「サンデーLIVE」の「ぐるっと!ニュース1週間」というテレ朝ニュースの月~金曜のアクセスランキング10位までを紹介するコーナーでは1位だった。2015年度の同会に、マルチまがい商法を行い昨年倒産したジャパンライフ元会長の山口隆祥氏が招待されていた問題だ。
野党側の追及本部で、安倍晋三首相が父で外相だった晋太郎氏の下で外相秘書官だった1984年当時の訪米名簿に山口氏と共に名前が記載されている資料を外務省担当者が出したのは6日のこと。月~金の5日間で、6日の金曜1日だけで1位になる跳ね上がりである。目立つ扱いをしたか、特に関心のある層の拡散などで増えたのだろう。
というのも、各メディアのサイトのアクセスランキングは、客観的なニュースの関心度というよりもメディアの個性やサイトの作り方に左右される傾向が強い。アフガニスタンで中村哲医師が4日に非業の死を遂げ、8日もほとんどの報道番組で大きな話題になっていたが、同コーナーでは6位と意外に低かった。
◆推測の域で続く報道
1位ということで番組中の「知りたいニュース」で取り上げ、「なぜ『桜を見る会』を“うやむや”に終わらせてはいけないのか二つの責任から読み解く」として、①前夜祭に後援会関係者約850人が参加、法的責任は?②マルチ商法の元会長を招待か、道義的な責任は?―を解説した。
ホテルニューオータニ「鶴の間」の前夜祭の会費5000円は安過ぎると言い、招待された地元有権者に安倍晋三首相側が料金を補填(ほてん)した場合は「公職選挙法違反の可能性」、ホテル側が補填した場合は「収賄罪の可能性」を指摘する一方、立食パーティーでは少なく料理を頼むこともあり「初めから5000円だった可能性」にも触れた。
ほかにも野党はさまざまな疑惑を追及している。番組で政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、「野党も証拠がない。与党も、安倍さんも説明するだけの材料を出せない。みんな推測の域を出ないままおかしいんじゃないかというのが続いている」と述べた。
また、ジャパンライフ元会長の山口氏が招待された件でコメントしたのが朝日新聞記者の藤えりか氏。朝日の元政治部長がジャパンライフ顧問だったことに、首相批判が朝日へのブーメラン発言となることを恐れてか、退社した先輩に「自分の名前が利用されるとは考えられなかったのか。ジャーナリスト倫理はないのか」と予防線を張った。
数ある招待状1枚と、顧問になるのでは結び付きのレベルが違うが、首相の招待状を悪用する人物の責任を問う以上に、首相がマルチまがいに加担したかのように取り上げるのもある種の印象操作だ。
◆野党の審議拒否批判
ただ安倍内閣は日本史上最長の内閣となり、これに盛大な「桜を見る会」となると「わが世の春…」の慢心イメージがどうしても重なってしまう。批判を受け、来年度の同会は中止、首相は全般的な見直しを行うことを表明した。
一方、野党が国会を延々と「桜」一色にすることに対し、8日のフジ「日曜報道ザプライム」でジャーナリストの木村太郎氏は、「桜を見る会を理由に審議拒否する野党もどうかと思う。日米貿易協定なんて、あんな大事な協定の承認の問題で、ほとんど審議しないで終わった。本当に法的問題があるなら東京地検特捜部に告発すればよかったと思う」と苦言を呈した。
政権に不正ありと疑い続けることで野党は自己アピールするが、やはり天下国家の政策で勝負して政権担当能力の方をアピールすべきだろう。
(窪田伸雄)