景気判断の下方修正が必至の状況で大型の経済対策に批判・注文の各紙

◆「規模ありき」と毎日

 「効果のある事業に絞り込め」(読売)、「規模ありきのつけは重い」(毎日)、「必要性と効果の精査を」(朝日)、「効果を吟味し具体化図れ」(産経)、「『賢い支出』なのかをしっかり監視したい」(日経)――

 政府が5日に閣議決定した、事業規模26兆円(国・地方の支出や財政投融資を合わせた財政措置は13・2兆円)の大型経済対策に対する各紙社説(6日付または7日付)の見出しである。見ての通り、各紙とも厳しい論調の内容となった。

 最も批判的なのは毎日で、「疑問の多い内容だ。最大の問題は危機的な財政にもかかわらず、規模ありきで策定された」とし、しかも、政府は米中貿易摩擦など海外リスクを強調するものの、日本経済は消費増税後も「緩やかに回復している」との認識を変えていないにもかかわらず、「規模を優先し、ばらまきになりかねない事業も詰め込んだ」とした。

 朝日も「大型の経済対策が、なぜ、いま必要なのか。それぞれの政策に緊急性があるのか。費用に見合う効果が期待できるのか」「際だつのは、規模へのこだわりだ」と強い疑問を投げ掛ける。

◆「賢い支出」求む日経

 読売、産経、日経の保守系3紙も一部評価はしつつ、「対策の規模や中身が適正かどうかは、詳細な点検が欠かせまい」(読売)などと、批判のトーンは毎日、朝日ほどではないにしても注文を付けた。

 特に産経は、台風19号など深刻な被害をもたらす異常気象が頻発し、防災や減災の取り組みが急務であること、また米中摩擦などで海外経済が悪化する懸念がなお強く、企業業績にも負の影響を及ぼしつつあることから、「積極的な財政出動が必要と判断したのだろうが、重要なのは、いかに対策の効果を高められるかだ」と強調。

 「予算のばらまきに終わらせず、災害や景気低迷を乗り越えられる強い経済を実現したい。そのためにも個々の施策の費用対効果を厳しく吟味し、対策の具体化を図らなければならない」と説く。

 日経もほぼ同様で、同紙の「賢い支出」も本当に日本の成長力強化につながるかということだが、読売、産経が言う「効果のある」「費用対効果」という意味も含んでいよう。

 3紙とも景気を下支えする対策を策定することには理解を示している。

 各紙が大型の経済対策に疑問を抱く理由の一つに、政府が景気について「緩やかに回復している」との判断を維持していることがあり、この点を読売、毎日、産経が言及している。

◆低迷続けば税収減も

 これについては、小紙7日付「記者の視点」でも指摘したが、消費増税後の最新の経済統計の多くが示す指標から、政府の景気判断の下方修正は必至、時間の問題とみて間違いないであろう。経済対策は19年度補正予算案と20年度当初予算案に分けて計上するわけだから、実施に移される頃には景気判断が変わっている可能性が高い。

 しかも、経済指標の数値は台風などの影響が重なったこともあり、消費低迷が長引いた前回14年4月の増税後の時より、悪化幅が大きく出ているのも少なくない。

 「消費増税による景気への影響も、まだ検証できていない」(読売)、「大規模な財政出動が必要なほど経済が悪化しているかどうかは冷静にみておきたい」「(政府が緩やかに回復しているという)判断を維持していることを忘れてはならない」(産経)などと悠長に構えていられる状況なのかどうかである。

 また、毎日のように、財政状況が危機的だから大型対策はケシカランとの批判だが、逆に大型対策を実施せずに景気低迷が長引けば、税収減が続いて財政状況がより悪化することも十分に予想される。要はいかに早く景気の悪化を食い止め、悪影響を最小限にとどめるかである。近視眼的な財政再建論こそ財政健全化に逆行する。

(床井明男)