オランダ・ハーグでの核安全保障サミットで…


 オランダ・ハーグでの核安全保障サミットで安倍晋三首相は、茨城県東海村の日本原子力研究開発機構(JAEA)が高速炉臨界実験装置(FCA)で使用しているプルトニウムと高濃縮ウランを米国に返還することを表明した。

 原子力の安全管理について日米間の協力をアピールする狙いもある。核物質の最小化に取り組むことは、今後あり得る核物質の盗難や紛失、引いては核テロなどを防止するために必要な一手と言える。

 原子力は発電だけでなく、がん治療のための放射線など医療やバイオ技術、各種工学への橋渡しとしての基礎技術などに広く活用されている。社会生活を円滑に営む上で欠かせないものだ。

 1953年12月、当時のアイゼンハワー米大統領は国連総会で「平和のための原子力」を提唱し、それを契機に国際原子力機関(IAEA)が設立され、平和利用に向けた研究開発が先進国を中心に進んだ。それから60年が過ぎた。

 今や原子力の安全管理は普遍的な課題だ。技術大国の日本が世界をリードしていくのは意義がある。それは原子力開発の現状を整理し新たな方策を提言するのにつながる。

 安倍首相はアジア初の拠点である核不拡散・核セキュリティー総合支援センターの活動を拡充し、各国の人材養成や能力構築に貢献することも明らかにした。世界の平和と安定にこれまで以上に貢献する「積極的平和主義」に基づくものだ。ぜひ軌道に乗せたい。