「うば捨て山」が復活?
地球だより
高麗葬―。これは貧困のため高齢になった老父母を子供が山に捨てた古代朝鮮の風習のことで、映画『楢山節考』で日本でも話題になった「うば捨て山」の朝鮮版だ。親孝行を基本中の基本とする儒教文化が朝鮮半島に浸透してからは、これを戒める風潮が広がったそうだが、近年、その高麗葬が復活している。とは言っても本当に山に捨てるわけではなく、認知症などの疾患で介護が大変になった老父母を子供たちが療養院と称する老人ホームに送ることだ。
一見すると、なぜ療養院入居が高麗葬なの?と思うが、あるメディアが特集で療養院入居の詳細な実態をレポートしていた。入居動機で多いのは認知症を患って家族のケアが難しくなったこと。だが、入居後に子供たちが訪ねて来るのは年2回の名節だけという家庭が相当数に上り、外出は自由だが実際には寝たきり、薬漬けの生活で、外出することもままならない。外の世界と断絶されたまま静かに最期を待つだけなのだという。
韓国ではここ10年で療養院が3倍に膨れ上がったが、多くは街中にある雑居ビルの複数階を施設として使っている。入居費数千万円を一括払いし、目前に海が広がる豪華マンションのような施設で余生をゆっくり楽しむなど夢のまた夢だ。レポートは「いつまでも長生きして下さいという言葉が嫌味に聞こえてしまうここ(療養院)は現代版高麗葬だ」と結んでいた。日本以上に猛スピードの高齢化社会に突入したこの国が直面する厳しい現実である。
(U)