観光馬車フィアカーの廃止論
地球だより
ウィーン観光の目玉の一つ、観光馬車のフィアカーを廃止すべきとの声が出てきた。フィアカーが路面を痛め、その修理代も馬鹿にならないからだという。これに対し、ルドヴィク・ウィーン市長は「フィアカーは市の文化財だ」と、廃止には消極的だ。
フィアカーは現在、シュテファン大寺院、ホフブルク宮殿などに拠点を構え、観光客を待っている。観光シーズンになれば、多くの旅行者がフィアカーを利用する。2頭立ての馬車に乗って歴史的建造物を観光すれば、中世の風情が蘇(よみがえ)ってくる。一説によると、フィアカーの営業は1693年に始まったという。
一方、フィアカーの馬にとって、車が走る通りを観光客を乗せながら歩くのは大変だ。馬が車に驚かないように、前方しか見えない目隠しが付けられているほか、お尻には糞受けのバッグが付けられている。
馬にとって、人間を乗せながら、硬いアスファルトを車にビクビクしながら走るのは決して快くないだろう。今年の夏のように灼熱(しゃくねつ)の日々が続くときは馬も命懸けだ。動物愛護団体からは、以前から改善が訴えられていた。
2007年にフィアカーの馬が心臓発作で急死したことがあった。突然死した馬は若い馬だった。ストレスは人間社会だけでの専売特許ではない。馬だって、ストレスを感じながら生きているわけだ。
フィアカーは観光には欠かせないものだが、狭い路上を車に追われながら、観光客を乗せて歩く馬を見るたびに、「これ以上、車が増えて路上が狭くなるなら、馬のためにもフィアカーを廃止すべきかもしれない」と思う次第だ。
(O)