機内食に不満の「和食通」


地球だより

 友人のエミリオは最近、日本の航空会社を利用して日本に2週間の旅をした。5度目の日本で、すっかり和食を堪能して戻ってきた。ところが、行き帰りの機内食には少々不満だったそうだ。「日本の航空会社だから期待したのに、なんだか大したことのない和食が出されてがっかりした。エコノミークラスでも真剣に和食に取り組むべきだ」と手厳しい。

 義妹のジャックリーヌの息子で建築家のダヴィッドは、以前は食わず嫌いで和食を食べなかったが、今では週2回は和食レストランで昼食を取っている。最近、自宅で開く手巻き寿司パーティーに招かれた。

 妻のカミーユも建築家だが、巻き寿司が得意で道具も持っている。ダヴィッドは日本を旅行した時、高額の日本製刺身包丁と研ぎ石を一緒に購入し、手入れに余念がない。友人たちもパリのどこのレストランの天ぷらが美味しいとか、新鮮な魚が手に入る店の話などで盛り上がっていた。

 フランスで、この20年で急増した和食レストランも岐路に立っている。当初は、冷凍した寿司を解凍して出す店、味噌をお湯で溶いて海草を浮かべただけの味噌汁も普通だった。経営者はアジア系が多かった。

 しかし、エミリオのように食にうるさく味に敏感なフランス人は、いつまでも「似非(えせ)和食」を食べているわけにはいかない。刺身ならこの店、天ぷらならあの店、美味しいうどんならあそこの店と、選ぶ段階に入っている。

(M)