リゾート地での「差別文書」
地球だより
スイス日刊紙ターゲス・アンツアイガー(15日付)によると、同国のグラウビュンデン州のリゾート地、アローザ(人口約3200人)の旅行者用アパートメントハウスでユダヤ人客向けの注意書が反ユダヤ主義だとして激しい批判を受けている。
問題の注意書は英語で書かれ、「ユダヤ人ゲストへ」とわざわざ特定している。一つは「プールに入る前と後には必ずシャワーを浴びるように」と記され、もう一つは「冷凍ボックスは決まった時間だけ利用するように」と警告している。
同旅行者用ハウスには毎年、多くのゲストがイスラエルから訪れる。同注意書を読んだイスラエル人客が本国のテレビ局に連絡したことから、この注意書は大きな反発を呼び、英国、フランス、イタリアなどの欧州メディアでも報道される“事件”になった。ホテル側は「注意書の表現が確かに良くなかった」と認め、即撤去した。
スイスではここにきて急速に外国人(他宗教)への排斥傾向が強まってきている。欧州では2015年以来、中東・北アフリカからイスラム系難民・移民が殺到したが、彼らの多くは反ユダヤ主義の教育を受けて成長したイスラム教徒だ。それだけに、難民の欧州定着が進めば、欧州で反ユダヤ主義が拡大する、といった懸念がユダヤ人側には強い。ユダヤ人がこの件を黙認しないのはそれなりの理由があるわけだ。
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